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第13話
言われた言葉が理解できずにいると、九流が苛立つように説明を付け足した。
「一年間で一千万。二年契約だから二千万支払う。どうだ?足らないか?」
「・・・・は?二千万?」
桁外れの金額に現実味がなくて、呆気に取られる。
「キャッシュで明日には必ず支払う」
真面目な顔で言われ、ざくろは本気なのかと冷や汗を流し始めた。
「病気持ちの奴とかもいるかもしれねぇし、何より誰かにチクられたらもう稼げねぇだろ?俺で手を打てよ」
「・・・・・」
「二千万が無理なら」
「いえ、違います!・・・ほ、本気で言ってるんですか!?二千万ですよ!!?」
「ああ。支払う。だから他に客は取るな」
九流の言う通り、以前に性病持ちの客がいた。
もし感染したら今後に響くこともあり、丁重にお断りしたのだが、なかなか引き下がらなくて逆にお金を渡して赤字になったことがある。
更に、もう一つ。
これも九流が言うように、一回10万という自分の商売が学校で大きな噂になりつつあることだ。
いつ教師の耳に入るかといつも心配していた。
退学になるだけならいいが、稼ぎ口もなくなる事はざくろにとってかなりの痛手となる。
二千万
とても大きな額だ。
だけど、今の一日一回10万の計算だとかなり損をする。
しかし、二年間1人だけ相手にすること、二千万が必ず手に入る保証付きならば、決して悪くない条件だった。
契約しようと思った時、ざくろはしまったと視線を落として頭を下げた。
「すみません・・・。有難い申し出なんですが、実は予約が半年ぐらい埋まってるんです。なので・・・」
断ろうとした時、九流は憤然と言い放った。
「そいつら全員には俺から伝えておく。気にするな。金が稼ぎたいなら俺が一番の太客だぞ?二千万で手を打てよ。他にもちょくちょく貢いでやるから」
椅子から立ち上がってベッドの上に座るざくろに近付き、顎を掴んで顔を上げさせると九流は不敵に笑った。
その笑みをざくろは見上げながら、こんなに良い条件なんて他にないと頭の中を巡らせた。
「分かりました。宜しくお願いします」
自分と同じ黒い瞳を見つめながら、九流の専属になるとざくろは契約を交わした。
互いの連絡先を交換し、半年以上埋まっていた客のリストを九流へメールで送信する。
九流はそれを冷めた目で一瞥した。
独特の威圧感に恐怖心を持つものの、これは仕事なのだと言い聞かせて、ざくろは頭を下げた。
「これからよろしくお願いします」
深々と頭を下げて扉まで移動すると、見送るように九流が付いてきて、先ほど投げつけた札束を拾い、ざくろの鞄の中へ放り込んだ。
「え!?」
「手付金だ」
びっくりして視線を上げると、九流はなんてことないと言ってのける。
「でも、こんな大金!!」
受け取れないと、お金を返そうとしたら九流は冷たい瞳を向けた。
「金で動く奴が今更、ぶってんじゃねーよ。明日からガンガン抱くからな。二千万分の性欲処理キチンとこなせよ」
冷たい声で吐き捨てて扉を開くと、九流は突き飛ばすようにざくろを部屋の外へ追い出した。
閉められた扉を暫く呆然と見つめて、ざくろは詰めていた息を吐く。
金で動く奴か・・・・
言われた言葉に少し傷つく自分がいて、笑いが込み上がった。
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