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第22話

待ちにまった第3日曜日、ざくろはTシャツにジーパンと軽装な格好で朝9時に寮の部屋を出た。 昨夜は九流との契約から初めて呼び出しが掛からず、有り難いことに体調がかなり良い。 寮の門を出るとき、日曜日だというのに制服を着た生徒会メンバーに囲まれる九流とバッタリ遭遇して、ざくろは頭を下げるだけの軽い挨拶をした。そのまま九流の横を通り過ぎようとしたが、いきなり腕を掴まれ呼び止められる。 「お前、外出するのか?」 「あ、はい!月に一回だけ第3日曜日はいつも外出許可を貰ってるんです」 驚いた後、笑顔で質問に答えるざくろに九流は見惚れた。 いつも笑顔を見せないだけにとても貴重で釘付けになる。 「猛・・・」 惚けている幼馴染みの名前を門倉が苦笑しながら呼ぶと、我に返った九流は少し頬を赤く染めてバツが悪そうにざくろの腕を離した。 「何時に帰って来るんだ?」 「門限の10時前には戻ります」 「戻ってきたら俺の部屋へ来い」 命令とも取れる言葉は、仕事だと連想させる言い方でざくろは小さく頷いた。 その時、ざくろのズボンのポケットの中の携帯電話が鳴った。 取り出した電話の液晶に表示された名前に嬉しそうに微笑むと、九流へ頭を下げて寮を抜ける門へ小走りで向かった。 少し後ろ髪を引かれる思いだったが、九流は生徒会のメンバーと一緒に足を進めようとしたが、鈴が鳴るようなざくろの声に足を止めた。 「あきら?おはよう!今、寮を出たよ。今日はいっぱい遊ぼうね」 興奮からか少し大きなざくろの声は少し離れた生徒会メンバー全員に届いた。 直ぐさま振り返り、地面を蹴ってざくろを引き止めようと駆け抜けたが、門が閉まる方が一歩早くて九流は追いつくことができなかった。

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