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第24話
今日は月に一度の約束の日。
今年の春から中学生になったばかりの3個年下の妹とデートだ。
約束の10時、ざくろはいつもと同じ待ち合わせ場所である大きな公園の噴水前で妹を待った。
「お兄ちゃん!」
少し離れた場所から満面の笑顔で手を振って走ってくる妹へざくろも大きく手を振り返す。
「あきら」
焦げ茶色の長い髪を白色のシュシュで右下に一つにまとめ、つばの広い白帽子をかぶったあきらは淡い水色のタングトップのマキシワンピースを着た今時のオシャレを楽しむ普通の女の子だった。
「お兄ちゃん、またその服なのー?」
「え?ああ・・・、うん。ダメかな?」
開口一番に前回着ていたのであろうTシャツを指差され、不満そうに顔を歪めるあきらに苦笑した。
「お兄ちゃん、私の服ばっかり買うんじゃなくて自分の買えば?」
「俺?俺のはいいよ」
「私が嫌なの!」
ぷくーっと頬を膨らませるあきらの頭をよしよし撫でて、ざくろは視線を落とした。
今日着ているあきらの服は先月のデート中にざくろが買ってあげたものだった。
活発な印象が強いあきらはピンクや赤よりも青や黄色がよく映える。
今着ている服も青色でざくろは目を細め、見つめながら似合っていると優しく微笑んだ。
「俺は服とか興味ないから。あきらは女の子だしお洒落に興味あるだろう?今日の服も似合ってて可愛いよ」
自分の容姿と全然似ていない妹はざくろの様な華やかさは全くない。
素朴だが別に不細工なわけでもなく、至って普通なのだが、ざくろにとっては世界一可愛い女の子だった。
「今日はお兄ちゃんの服を見に行こう?私が選んであげる」
ざくろに褒められて嬉しそうに頬を赤く染めたあきらは、いつものように自分の腕へ甘えるように絡らみついてきた。
二人は目と目が合うと笑顔になって、まるで恋人同士かのように街へと繰り出した。
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