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第25話
ショッピングモールへ着くなりあきらに腕を引かれ、メンズコーナーへ直行したものの、ざくろの容姿に惹きつけらた店員が代わる代わるしつこいぐらい声をかけてきた。それを嫌がったあきらがその都度、追い払うがその頻度の多さに不機嫌になっていった。
「お兄ちゃん、いつも黒とか白だからこういうブルーとかの明るい色選んだら?」
さっさと服を決めようと意気込むあきらは、鮮やかな青色のシャツを掲げた。
これがいいとかあれがいいとか全く興味がないざくろはただ、自分の服を真剣に選ぶ妹が嬉しかった。それをただ見ているだけで幸せに浸れた。
数分後、あきらのお眼鏡に適った服は3着で、水色と紺のTシャツ2枚に、黒と白のストライプ柄のハーフパンツだった。それらを購入すると昼時なこともあり二人はそのままランチへと向かった。
「何食べたい?」
「パスタ!」
「あきらはパスタ好きだね」
「美味しいもん」
ショッピングモールの中のレストラン街に向かいイタリアンのお店へ入る。
パスタとサラダとスープ。そして、ピザを頼んで二人は離れていた一ヶ月間の報告も兼ねたランチタイムを楽しんだ。
主にあきらが一人で喋っているが、それが嬉しいから始終笑顔でいれた。
食後のデザートでパフェを食べる妹の姿を前に、ざくろは幸せを噛みしめる。
昔の自分じゃ妹にちゃんとご飯を食べさせてあげることすらままならなかった。
生ゴミを漁さり、食べられそうなものを分別して妹の前へ差し出していた。
惨めで毎日が悲しかった。
「・・・あきら、毎日大丈夫?」
育児放棄の両親は自分にもあきらにも感心はないが、時に鬱憤を晴らすように暴力を加えてくることがあった。
実家暮らしの日々を思い出すと心配で不安になる。
「大丈夫。あの人達、全然家に帰ってこないし、お兄ちゃんが毎月くれるお金もバレてないよ」
笑って頷くあきらに視線を落とす。
「側にいてやれなくてごめん」
「気にしないでよ!電話したらいつでも話せるし、こうして月に一回デートしてくれるもん。私、大丈夫だよ」
ニコニコしながら笑う妹の健気さを感じて胸が痛んだ。
全寮制のこの学校へ入ると話した時、毎日嫌だと泣いていた妹は最後の日、涙を堪えて笑顔で自分を送り出してくれた。
小学校を上がったばかりなのに、一人暮らしのような事をさせてしまいざくろはいつも気がかりだった。だが、妹を確実に高校へ通わせるにはお金がどうしても必要なのだ。
それには今の学校が一番の早道だと思った。
結果、当初の目的通り多額の金銭を稼げた。
九流が卒業して契約が切れたら、ざくろは学校を辞めてあきらの元へ戻ろうと考えている。
高校は別の場所へ編入してもいいし、学校には通わず、真っ当な仕事に就いてコツコツ働くのも有りだと思った。
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