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第26話
「お兄ちゃん、学校は楽しい?」
「え?」
「友達出来た?」
「・・・・」
突然の自分についての話題に驚いたが、言葉を詰まらせたのはその内容のせいだった。
あきらは口籠るその姿に眉を垂らして心配そうにお願いしてくる。
「お兄ちゃんもっと自分の事、大事にしてね?」
「・・・うん」
「友達も作ってね」
「・・・・・友達ではないけど、毎日会う先輩はいるよ」
少しでも妹の心配を軽くしたくて九流のことを口にした。
その途端、あきらは身を乗り出して九流のことを根掘り葉掘り質問してきた。
一つ上の優しい先輩とだけ言って後は淡く微笑んで躱すざくろにこれ以上は聞けないかと、あきらは断念する。
親しい人間を作るのが嫌なざくろは友達を作らない。
性格もいいし暗いわけでもなく、寧ろ友達になりたいと言ってくる人間はごまんといた。
もっと積極的になればいいのにと常々思っていたが、何故か親しい人間を作るのを避けているのだ。
「そんな事より、あきらの行きたい所に行こう。カラオケ?ボーリング?まだ時間もあるし動物園とか遊園地でもいいよ!」
お店の中の時計で時刻を確認し、ざくろが提案するとあきらは気を取り直して遊園地と元気に答えた。
日が暮れるまで遊園地で思う存分二人は遊び、中のレストランで夕飯を食べた後、あきらを実家まで送り届けた。
両親は相変わらず不在で、そのことに安堵する気持ちと妹を一人にする罪悪感に苛まれる。
「お兄ちゃん、今日もありがとう。楽しかった!」
ぎゅーっと抱きついてくる妹をキツく抱きしめ返してからざくろは封筒を手渡した。
「足りなかったら電話して」
その封筒の中には毎月のあきらへの生活費である30万が入っている。
「こんな大金、足りないわけないでしょう」
困ったように笑うあきらにそれなら良かったと微笑む。
「また来月、楽しみにしてるね」
「私も。気をつけて帰ってね」
「うん。ありがとう。じゃあね・・・」
玄関の扉を開いて、あきらが家の中へ入るのを見届けるとざくろは寮へと帰っていった。
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