28 / 229
第27話
門限である10時前にざくろはちゃんと寮へ帰ってきた。
本当は疲れているのでこのまま寝てしまいたかったが、出かけ際に九流から今夜は部屋へ来るよう言われている為、そのまま九流の部屋へ直行した。
またあの快楽責めに合うのかと思うと少し足が竦むが、今日のあきらとのデートを思い出すと稼がせてくれている九流には本当に有難いと感謝の気持ちが沸き起こっていた。
あきらが自分にと選んでくれた服の入った袋以外にもう一つ、妹おすすめの美味しいと評判のケーキ屋で九流へのお土産を買ってきていた。
妹以外へこんな手土産を持って帰るのは初めてで緊張と恥ずかしさが入り混じる。
「先輩・・・、喜んでくれるといいな」
温かな気持ちになって九流に早く会いたいとすら思い、歩くスピードを上げた。
部屋の前に立つと拳を作って手の甲でノックする。
扉はすぐに開いて九流が顔を見せたが・・・・・。
「こんばんは、九流せん・・・ぱい・・・・?」
笑顔で嬉しそうに挨拶をしたざくろは出てきた九流が物凄く不機嫌で発する空気があまりにもピリピリとしていることに身を固めた。
「入れ」
短い命令を下され、重い足をなんとか進めて部屋へと入った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
部屋へ入ると九流は大きなソファへ座り、ざくろは所在なさげに立ったまま困り果てる。
長い沈黙の後、ざくろは手に持っていたケーキで何か会話を出来ないかとこの重っ苦しい空気を払拭するように話しかけた。
「せ、先輩!あの、ここのケーキ美味しいって評判らしくて良かったら・・・」
「うるせぇ、黙れ」
不機嫌な声で言葉を遮られ、ざくろは掲げたケーキを残念そうに下げて俯く。
どれくらいの時間、沈黙が続いたのか分からないが犬の様に言われるがままずっと九流からの指示をざくろは黙って待っていた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!