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第36話

「待てよ!・・・待て、ざくろ!!」 足早に逃げるざくろを引き留めて自分の方へ向かせたが、九流からの視線を避けるようにざくろは顔を俯かせた。 こちらを見ようともしないその態度にイラッとして、ざくろの顎を掴んで無理やり上を向かせる。 「っ!」 驚いたように目を見開いて自分を見つめてくる漆黒の瞳に言葉を詰まらせた。 謝れ、自分っ!!! 心の中で叫ぶものの声に出なくてダラダラと汗をかく。 「・・・・・朝食はいいんですか?」 顎を掴んでいた手をやんわり払われ、ざくろの質問に九流は食堂の一件を思い出した。 ー 淫乱野郎 ー なんであんな事を口走ったのか分からない。 分からないが確実に聞かれていたのは分かる。 「いや、まだ食べてない・・・」 だから一緒に食べようと口を開いた時、ざくろが力無く笑った。 「俺は食欲無かったんで、どうぞ行ってください・・・」 「え?」 「俺がいると嫌でしょう?」 視線を落とし、泣きそうに笑うざくろに傷付けたのだと九流は胸が苦しくなった。 「嫌とか・・・」 あり得ない・・・・ 「朝食はちゃんと食べろよ。ただでさえ細いのに。これ以上抱き心地が悪くなると嫌だ」 こんなこと言いたくないのに口が勝手に動いて自分自身に嫌気がさす。 それなのに、何も悪くないざくろが無理やり笑顔を作って謝ってきた。 「それは・・・、すみません。パンでも買ってちゃんと食べておきます。先輩は食堂へ戻って下さい」 淡く微笑んで告げてくるざくろは落ち込んだ背中を九流へ向けて、トボトボ歩いていってしまった。 謝りたいのに いつも傷付けて憎まれ口しか叩けない 素直になれない あの頼りないか細い肩を抱いて守ってやりたいのに なんで突き放して、突き飛ばして、傷付けるんだろう・・・・ 九流は今すぐ走って、ざくろの全てを抱きしめたいのに、謝りたいのに 足が 口が 動かなくてざくろが自分から遠ざかっていくのをただジッと見ていることしかできない自分に絶望した。

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