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第39話
side 九流
体調を崩してる?
本当に!?
門倉からの情報に心配で、いても経ってもいられない九流は携帯電話を手に取った。
3日間、本音は会いたかった。
会ってちゃんと謝りたかった。
そう思うと、もう今すぐあいつに会って抱きしめたい
ざくろの顔が見たくて抑えきれない衝動に九流は携帯電話でメールを打つ。
今日の放課後、会えるか率直なメールを送った。
返事は会えます。と、簡素なものだったが九流は安堵の息を漏らした。
高熱出してぶっ倒れてるなら普通断るよな?
だったら、門倉の情報はデマだろう
嘘の情報を持ってきた門倉に舌打ちするものの、九流はざくろと今日会えるきっかけに繋がったと思うと嬉しくもあった。
小さく深呼吸して少し緊張で汗ばむ手を握り締める。
絶対謝る
今日こそは謝って仲直りする!
そんでもって、めちゃくちゃ優しく抱く!!
足腰立たなくして俺の部屋から一歩も出られないぐらい啼かせてやる
九流は要らぬ意気込みも背負い、口元を笑みにした。
自習である九流のクラスは勉強ではなく、ゲームや漫画等、好き勝手に遊び呆ける生徒達ばかりで楽しそうに騒いでいた。
九流も勉強をする事もなく、教室の窓からグランドをぼんやりと見つめていた。
「あ!アレって一年生かな?綾はいるかな〜?」
いつの間にか自分の背後に来ていた門倉が嬉々として以前言っていた恋に落ちたという天使を探し始めた。
綾という人物の名前は白木 綾人(しらき あやと)。門倉が天使というだけあって、その容姿はとても愛らしいものだった。
グランドを眺めていても人の引き寄せる具合から、広いグランドでアリがたかるように大きな円が綾人の周りに広がった。
「綾はモテるなぁ〜。本当可愛い」
声色こそ優しいが笑う瞳が笑ってなくて怖かった。
グランドへ視線を戻してざくろの姿を探すが、見当たらなくて九流は首を傾げた。
人目を惹くざくろは綾人の様に取り囲まれる事はなくとも、遠目から全ての人間の視線を奪う人物なことから、嫌でも悪目立ちして見つける事は容易いのだ。
「あいつ、サボッてんのか?」
ボヤく九流に門倉が溜息を吐いた。
「だから、寝込んでるんだろ?」
「その情報デマだから。さっきあいつに連絡したら元気そうだった」
「嘘!?本当に?」
いや、声は聞いてないけど
メールだけど、もし体調が悪いなら言うはずだ
九流は少し不安な思いを残しつつも頷いた。
「まぁ、元気ならいいんだけどね・・・」
他人事のように答える門倉は愛しい恋人へ視線を戻して嬉しそうに窓の外を見つめた。
side 九流 終わり
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