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第41話
「んぅ・・・」
喉を通過する冷たさにうっすら目を開く。
目の前に九流の顔が広がってざくろは驚きに息を呑んだ。
「え・・・?せん・・・ぱい・・?」
回らない頭で九流を見ると、不機嫌な顔と声が返ってきて、ざくろはビクッと体を竦めた。
「お前、ふざけんなよ!何やってんだ!風邪なら風邪って言えよ!」
「・・・・すみません」
迫力に押され、掠れる声で謝ると重くて怠い体をなんとか起こして時計を見た。
「まだ昼なんですね。ちゃんと放課後までには体調治すんで・・・」
仕事はちゃんとするから怒らないでと瞳を伏せるざくろに自分の気持ちの意図が伝わらず、九流は奥歯を噛み締めた。
「アホかっ!こんなお前抱いたら死ぬぞ!いいから寝ろ!」
学校を出る前、保健室へ寄って風邪薬を貰ってきた九流はそれをポケットから取り出すと、ざくろは頭を下げて受け取った。
「すみません・・・、ありがとうございます。冷蔵庫にカロリー補給のゼリーがあるんで取ってもらっていいですか?」
ゼイゼイ息を切らしながら冷蔵庫を指差すが、九流はそれを無視してコンビニで買ってきたサンドイッチやおにぎり、プリンやゼリーを袋から取り出した。
それらの封を切って折り畳み式の簡素な机を手繰り寄せ、バラバラと無造作に置いていく。
それを熱で朦朧とする意識の中、見つめていると九流に怒鳴りつけられた。
「ボケッとしてないで、食えるもん食えよ!」
ビクッと体を跳ねさせて驚くものの、ざくろは目を瞬かせるだけで食品に手は付けなかった。
「え?な、なんで?先輩のでしょ?」
「お前のだよ!俺は後で適当に食べるからお前は食べれるもんさっさと食べて薬飲んで寝ろ」
「・・・そんな、悪いですよ。俺、ゼリーあるんで」
ふらつく体でベッドを降りようとすると、肩を抑えて立ち上がることを止めた九流は冷蔵庫からカロリー補給用のゼリーを取りに行ってくれた。
丁寧に蓋を開けて手渡され、ざくろはそれに口付ける。
「・・・お前、それが好きなのか?」
ぶっきらぼうに聞かれ、何を言われてるのか分からなくて首を傾げると、九流がゼリーを指差した。
「だから、そのゼリーが好きなのかって聞いてんだよ!」
「え?これ?いや、別に・・・・」
ゼリーを飲み込むチューブから口を離し、ざくろは手の中のそれを見て笑った。
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