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第46話
ざくろの熱は夜になっても引かなかったが格別上がることもなかった。
薬を飲んで今夜もう一日ゆっくり休めば熱も下がるだろうと九流が呼んだ医師はざくろを診察して風邪薬を置いていった。
医師の診察が終わると九流は食堂へお粥を作るよう言って、再びざくろの部屋へ戻った。
スースー寝息を立ててベッドの上で眠るざくろに小さく息を吐く。
部屋を一巡して、とても簡素で殺風景なことに眉間に皺を寄せた。
部屋にはシングルベッドと勉強机、そして小さな冷蔵庫と部屋の端っこにプラスチックの部屋着を入れる収納箱と折り畳み式の小さな机しかない。
どれも安物でとてもこの学校の生徒の部屋とは思えない代物だった。
「金ならあるのになんで買わねーんだ、こいつ?」
ベッドの端に座り、汗ばむざくろの額を撫で付けた。
溢れんばかりの魅力を持ち、優れた容姿を持つざくろが体を売っていると知った時はいろんな意味で驚いた。
一回10万。
金額もなかなかの高額でとんだ浪費家だと思った。
でも、ざくろを知れば知るほどどうやらそれは間違いで、ざくろはとても質素で慎ましかった。
華美に自分を飾るわけでもなく、何かを買い漁るわけでもない。贅沢とは程遠い振る舞いにずっと九流は疑問を抱いていた。
自分との契約を結んで二千万円という高額を手に入れても生活水準は変動してる様子はない。
月に一度の外出でパァーッと使っているのかと思いもしたが、以前の日曜日に帰ってきた時の荷物を見るとそんな様子もなかった。
妹に貢いでるのか?
それともギャンブル?
ざくろの何もかもが疑問で九流は首を傾げる。
あまり人付き合いは良くないようだし、友達と言える人物も学校にいないようだった。
電話で少し話をしたざくろの妹のあきらは友達を作らないなどと言っていた事を思い出す。
そして、喜怒哀楽が薄いとも・・・
まさしく本当だなと九流は納得する。
何をしても何を言っても基本、ざくろは無表情だ。
時折何かを諦めたような顔になったりどこか冷めた表情で淡く微笑む。
唯一、日曜日に外出をする時に見せた嬉しそうな笑顔を九流は思い出した。
妹と会えるのがそんなに嬉しいんだな・・・
会ったこともない妹に九流は羨ましさを感じた。
自分に見せたことのない顔をあきらという妹は知っているのだろうか
もっと笑って欲しい
もっと甘えて欲しい
あんな寂しい顔で笑ったり諦めたような顔にならないで欲しい
九流は人生初めてのこの感情に身が焦がれそうな想いを抱いた。
誰かを守りたい、幸せにしたいなんて思ったこともない
とても綺麗で人形のように愛らしいざくろの寝顔に九流は惚けるように息を吐いてざくろの頭をまた撫で付けた。
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