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第49話
「幾らでしたか?支払います」
財布からお札を取り出すざくろに呆れて溜息が漏れる。
「んなもんいらねーよ、アホ」
律儀というか甘え下手というかしっかり者というか、なんとも損な性格のざくろが愛おしい反面切ない。
お金を受け取らない自分に財布を見つめてどうしたものかと悩んでいるざくろの頬を撫でて、少しぎこちない声で聞いてみた。
「・・・次の日曜、空いてるか?」
声が少し震える
デートの誘いなんだが断られたらと思うとビビっている自分に笑いそうだ。
「空いてますよ」
「・・・・・空いてるなら一緒に外出しないか?」
「寮の外ですか?」
軽快に聞かれて九流は首を縦に振った。
「ちょっと、宿題が多くて午後からでもいいですか?」
すみませんと謝るざくろに九流は大きく頷いて、提案する。
「宿題なら午前に俺が見てやるよ」
「本当ですか!あっ、でも・・・、俺、馬鹿だから先輩の事イラつかせると思うんでやっぱりやめておきます」
一瞬笑顔になったが、ざくろの謙虚さがそれを阻止するように首を横に振って断ってくる。
自分としては朝から一緒にいられる事の方が嬉しい。だから、一緒に居たくないとかではないのなら変な遠慮はして欲しくなかった。
だから、ざくろの頭を押さえるように撫でつけて決定事項のように強引な言葉で締め括った。
「んなこと気にしなくていい。10時に俺の部屋へ来いよ」
威圧的な雰囲気の九流にざくろは戸惑いながらも小さく頷いた。
くそ・・・
可愛いな・・・
遠慮なんてしなくていいのに
お前が頼めばなんでもしてやる
九流は胸のモヤモヤを掻き消すように乱暴にざくろの頭を掻き回した。
side 九流 終わり
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