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第50話

「あの・・・、先輩狭くないですか?」 九流は再びざくろを抱きしめてシングルベッドへ横たわった。 自分ですら狭いと感じているのだ。 九流が狭くないはずない。 「狭い」 「やっぱり、自分の部屋に帰ったほうが・・・」 「ここでいい」 言葉を遮り、短く答えてくる九流に諦めたようにざくろは溜息を吐いた。 瞳を閉じた時、九流は静かな声で訪ねてきた。 「・・・もうしんどくないのか?」 「少し怠いだけで平気ですよ」 「そうか・・・」 安心したように九流はざくろを抱きしめる腕に力を込めた。 「お前、拘りがないって言ってたけど本当にないのか?」 「え?」 「好きな食い物とかないか?」 「・・・はぁ。特に」 いきなりなんの事か分からない質問にざくろは戸惑いながら頷いた。 「日曜は一緒にお前の好きな物を探そう・・・」 ぎゅーっと抱きすくめられざくろは混乱する。 「え!?な、なんでですか?」 「お前の好きな物が知りたいから」 「そんなのないですってば!」 「だから探しに行くんだろ?」 「別に必要ないんでいいですよ!」 「・・・・じゃあ、妹に会わせろ」 「あきらに!?」 流石にその言葉には驚いて、九流の腕から頭を上げた。 「ダメか?お前が唯一大事にしてるもんなんだろ?」 「・・・そ、そうですけど」 あきらに会いたいなんて理解不能過ぎて頭が痛くなってくる。 「じゃあ決まり!ざくろの妹に会おう。連絡しとけよ。そうと決まったらもう寝ろ!」 反論しようとする自分に気付いたのか、九流は寝ろ寝ろと会話が出来ないようにざくろを眠るようにはやし立てた。

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