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第52話
「あきら、ごめんね。そしたらまた日曜に。うん。バイバイ」
携帯電話を耳から離して、ざくろは通話を切るボタンを押した。
日曜日、結局、何度も断りはしたが九流はあきらに会わせろとしつこく食い下がってきて、ざくろは根負けした。
了承すると目の前で今すぐ妹へ電話をかけろとせがまれ、渋々電話をかけて日曜会えるか聞くとあきらは嬉しそうにその日は空いていると答えた。
「・・・これでいいですか?」
目の前で嬉しそうに笑う九流に聞くと抱きしめられた。
「お前の大切なもんが見れると思うと嬉しい」
何がそんなに嬉しいのか、九流が不可解で仕方ない。
俺の大切なもの?
確かにあきらは俺にとって唯一無二の存在だけど先輩には全く関係ないはずだ・・・
「なぁ、ざくろ。・・・キスしたい」
「え?・・・んっ」
ぼんやり抱きしめられていたら九流にチュッと軽くじゃれる様な軽いキスをされた。
「可愛いな・・・、日曜が楽しみだ」
明後日がその日曜で今日は金曜日。
学校が終わって、ざくろは九流の部屋へ呼び出されていた。
仕事だと思って来たのに九流は一向にことに及ぼうとせず、ただ膝の上へ座らせたり抱きしめたりするだけだった。
「ざくろ、テレビ観るか?」
「え?はぁ・・・、どちらでも」
九流念願のあきらへの電話もしたのにまだしないのかとざくろは内心驚いた。
自分が何しにここへ来ているのか分からなくなる。
あの熱を出した日から九流の態度は優しく自分へ対しての空気感が柔らかくなっていた。
九流はベッドへ登ってテレビのリモコンを取ると電源を入れてチャンネルを無造作に変えていった。
人気のバラエティー番組がテレビに映し出され、名のある芸人達が何か騒いでいてざくろもそれに目を向けた。
「ざくろ、来いよ」
ベッドの上でごろりと寝転がり手招きしてくる九流にやっとか、とベッドへ向かった。
「・・・失礼します」
一言、口添えするとざくろはベッドへ上がった。
着ていた制服を脱ごうとシャツのボタンに手をかけたら九流がその手を掴んで抱きしめてくる。
「どの番組観る?ざくろはバラエティー好きか?」
再びリモコンを手にチャンネルを変えて聞いてくる九流に訳が分からなくてざくろは直球で聞くことにした。
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