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第55話

何か言いたそうな九流に淡く微笑んでざくろは続けた。 「こんな閉ざされた学校にいるからこんな俺でもよく見えちゃうんですよ。俺なんて守らなくも甘やかさなくても、もうすでに先輩のものですよ。先輩の所有物です。卒業するまでの暇潰しのオモチャです。俺は男だし多少手酷く扱っても大丈夫ですよ」 自虐的な言葉を連ねるざくろは本当に心からそう思っているのか九流へ勘違いするなと、諭すように告げた。 「俺みたいな奴、先輩は卒業したら忘れます。だから先輩が好きなように・・・」 「黙れ!!」 坦々と話すざくろが嫌で胸が痛くて苦しくて九流は怒鳴り声を上げた。 ざくろはこれ以上話し合っても無駄なことと、居たたまれないこの空気に耐えられず、身支度を整えて部屋を出て行った。 残された九流は荒れる気持ちを落ち着けたくて瞳を閉じる。 ざくろの言葉が頭の中を反復していて不快感と苛立ちに気がおかしくなりそうだ。 ー お金貰って体を売ってるんです ー ー 性欲処理機としか思ってないし、先輩もそう思ってくれて構いませんから ー ー オモチャ程度に思ってもらった方が楽です ー ざくろのあのテンションは恐らく本気で心から自分の価値はそうだと思っていそうで怖かった。 どの様になったら自分をあそこまで貶めれるのか九流は不思議で仕方ない。 こんなに好きなのに・・・ 恋愛経験が乏しい自分はどうやってざくろに寄り添えばいいのか分からなかった。 ー ・・・・・先輩、気の迷いですよ ー ああ言われて悔しかった筈なのにどう言葉にすればいいのか分からなかった。 そんなことない 本当に本気で好きだと言いたかった でも、今までの自分の数え切れない悪態にそんな言葉は薄っぺら過ぎて、届かなくて、何を言っても嘘っぽくて、九流は何も言えなかった。 自分が本気の恋愛を今まで一度でもしていたらまた違ったのだろうか 人を大切にして接してこなかった分、ざくろをどう大切に扱っていいのか分からない 自分の経験値の浅さに九流は額を抑える。 好きだ 本当に好きだ・・・ 大事にしたい 大切にしたい だから、そんな風に自分を貶めないで・・・・

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