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第61話
「せ、先輩!本当に待って!!」
寮からそこそこ離れた場所でざくろは本気で焦り始めた。
流石に無一文で外出するのに不安感が半端ない。
それに今日はあきらとも会う。
自分はいいがあきらに食べたいものや欲しいものを我慢させるのは嫌でざくろは財布を取りに寮へ戻りたいと九流へ頼んだ。
「財布なんて必要ねーっつってんだろ?」
「必要ですよ!先輩、俺の分出す気なんでしょうけど、出してもらうつもりなんてありませんから!」
「なんでだよ?貢がせろよ」
「はぁ!?」
意味不明な発言にざくろが素っ頓狂な声を出す。
「お前は俺のもんなんだろ?だったら俺色に染まっとけ」
肩を抱かれざくろは呆気に取られていると九流は手を挙げてタクシーを捕まえた。
タクシーの後部座席へざくろを押入れると九流も乗り込み、運転手へデパートへ向かう様に告げたあと、ざくろの指へ自分の指を絡めるように手を繋いできた。
「あ、あの・・・・」
男同士で手を繋ぐなんてと、焦っていたがそれを見ていたタクシーの運転手がニコニコ笑って話しかけてきた。
「可愛い彼女だねー。君、せっかくのデートなんだからもっとスカート履いたりしておめかししなきゃ!彼氏がかわいそうだよ」
バックミラー越しに話しかけてくるドライバーはどうやらざくろを女の子と勘違いしていた。
少し大きめの使い古したティーシャツにジーパンといった軽装なのだが元が女っぽい顔立ちのざくろが着るとボーイッシュな女の子にしかみえなかった。
「今から服を見に行くんだ」
「そうなのかい?こんなに可愛い子なら服も本望だろうねぇ」
九流は上機嫌で頷き、カラカラ笑うドライバーにざくろはいたたまれなくて瞳を伏せた。
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