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第64話
店を出る時、大荷物になるなと思っていたら九流はそれを見越していたようで店員に買ったものを配送するよう指示していた。
何から何まで九流の手際の良さにざくろは感心した。
「ざくろ、昼飯食べに行くぞ」
手を繋がれ、その手を握り返していいのか戸惑う。
かといって振り払う事も出来ずに引っ張られる形で歩いていると九流は首を傾げて聞いてきた。
「どうした?」
「え?あ、いえ・・・」
繋がられた手を見つめると九流が微笑んで、自分の心臓がトクンッと、跳ねるのに気付いた。
「お前さ、ちょっと甘えてみ?」
「へ?」
「ほら!」
手を離して両腕を広げる九流に体が固まる。
あ、甘える!?
初の試みで一体どうすればいいのか全力でパニックに陥った。
「ほら、早く!」
急かされて、更に焦った。
「え、えっと・・・えっと・・・・」
回らない頭で必死に考えた結果、ざくろは九流の左腕に自分の両腕を絡み付けて身を寄せた。
「・・・っ!」
まさか抱きつくように腕を絡めて来るなんて予想外で九流の体がピクッと跳ねる。
きっとまた軽く交わされるのがオチだと思っていた分、喜びよりも驚きが勝ってしまった。
「あ、あれ?違いますか?妹がいつもこうして甘えてくるから・・・」
間違えたと顔を赤くして腕から手を離そうとするざくろに九流は歩き出してそれを阻止した。
「いいから!俺から離れんなよ」
柄にもなく顔を赤くして照れる九流はそんな自分がバレたくなくてざくろからそっぽを向いた。
九流の反応にこの甘え方が正解だったのかいまいち分からないざくろだったが、何も言ってこないなら良かったのだろうと思うと、ひとまず安堵の息を溢した。
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