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第67話

side 九流 可愛いな・・・ 店へ入ってからなんか、もじもじしてるけど何考えてんだろ? あいつらが勘違いするように確かに今日のざくろは女に見えないこともないな・・・ まぁ、顔が可愛いからか仕方ないか 見惚れるようにざくろを観察した。 キャップ帽を脱いでこちらを見てきた目と合うとざくろの視線が焦るように落とされて九流は自然と吐息が漏れた。 伏し目がちな瞳もとても魅惑的で綺麗なざくろに釘付けになる。 暫くして頼んだコース料理が運ばれてきて手と手を合わせていただきますとお箸を持つざくろに自分も箸を手に取った。 「美味しいですね」 にっこり笑いかけてくるざくろに料理の味なんて分からないぐらい心臓が騒ぐ。 味覚障害かと思うほど味がしない でも、柔らかな笑顔を見せるざくろの姿が目の前にあるだけで胸が満たされた。 可愛い・・・ 好きって言いたい 言ったらまた否定されるか・・・? 自分の気持ちを否定されることはとても辛いものだとこの恋で九流は学んだ。 それ故に怖くてざくろに踏み込めないでいる。 この気持ちをどう伝えたらうまく相手に伝わるのか模索中の九流はだだ漏れしそうなこの気持ちを食い止めるために自我を保つのに必死になっていた。 今日は一回ぐらい好きって言いたいな・・・ 何とも謙虚な心意気を胸に秘め、九流はポーカフェイスを決め込んでご飯を口へ運んだ。 side 九流 終わり

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