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第73話
少しして無事に涙は引いたが、騒ぎを起こしたことで店内の視線が痛く、早々に二人はカフェを出た。
横を歩く九流をそっと見上げると、とても機嫌が良さそうで安心した。
「ざくろ、甘えてみ?」
目と目が合って優しい笑顔で言われておずおずと九流の腕へ自分の腕を絡ませ、体を擦り寄せる。
恥ずかしさもあったが嬉しさの方が大きくて幸せな気持ちが込み上がった。
それと同時にざくろの中の警告ランプが点滅する。
これ以上、九流と関わると駄目だという自分の中の警告に気付きながらもそれを見ないように瞳を伏せた。
「先輩の行きたいところって家具屋ですか?」
「ああ」
大きな家具屋へ来て二人は色々見て回った。
店員を呼んでベッドを筆頭にタンスやテーブル、ソファーを購入していく。
「先輩、模様替えでもするんですか?」
「ああ」
自分の質問に家具を選ぶことに集中しているせいか、雑な返事の九流に黙る事にした。
今の先輩が使ってる家具も綺麗でまだまだ使えそうなのにな・・・
勿体無い。と心の中で思っていると家具選びを終えた九流はレジへお金を支払いに行った。
「待たせたな。所で、妹にはドタキャンしてねーだろうな?」
「あ!連絡するの忘れてた!!」
っというより、電源切ってそのままだったとざくろは焦って携帯電話の電源を入れた。
時刻は約束の時間の10分前で妹のあきらからメールが届いている。
いつもの待ち合わせ場所である噴水前に既に到着しているようでざくろは焦った。
「ヤバっ!あきら、もう着いてるみたいです」
「じゃあ、急ぐぞ」
二人は急いで約束の待ち合わせ場所へと向かった。
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