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第76話

「うちの親、育児放棄なんです・・・。だから私を赤ちゃんの時から育ててくれたのはお兄ちゃんなの」 「・・・育児放棄?」 「うん・・・。食べ物もくれなくて本当に毎日死ぬかと思った。でも、お兄ちゃんがいつもなんとかしてくれてた。泣いても喚いても誰も助けてくれなかったわ。お兄ちゃんだけ。いつも私を守ってくれた。自分よりも私を守ってくれた」 あきらは伏せていた目をざくろへ向けて申し訳なさそうに呟いた。 「お兄ちゃんがあんな風に自分に無頓着なのは私のせいだと思う」 そこまで言うとあきらは九流を見た。 「私からはここまでしか言えません。お兄ちゃんが話してないなら話したくない」 もっともな事を言われ、九流は頷く。 正直もっと詳しく聞きたかったけれどざくろの気持ちも無視は出来ない。 それ以上追求してこない九流にあきらは安心したように微笑むと顔を上げてざくろの事を嬉しそうに教えてくれた。 「お兄ちゃん、アイスクリーム好きなんですよ!基本冷たい食べ物が好きなんです」 「へ〜。そうなんだ!」 「はい。そうめんとか!中華麺とか!ゼリーとかプリンとか」 「いい事聞いた」 「カキ氷も大好きですよ!いちごミルク味!」 「いちごミルクね・・・」 「たこ焼きやお好み焼きの粉なもの系も好きです!」 有力な情報に聞き入ってると、あきらは嬉しそうに九流を見た。 「お兄ちゃんの事、好き?」 直球な質問に九流は真顔になって、少し考えたあと大きく頷いた。 「なぁ、お願いがあるんだけど・・・」 「お兄ちゃんの為になる事ならきいてあげますよ」 にっこり笑うあきらに九流は優しい声で頼んだ。 「あいつに甘え方教えてやってくれないか?」

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