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第78話
基本的にあきらは甘え上手で日頃からざくろにワガママを言ってきている分、とてもスマートかつ躊躇いなくざくろへ甘えた。
「お兄ちゃん!今、私以外の人見てた!」
「え?見てないよ?」
「見てた!他の人見る暇あるなら私の事、構ってよ!!」
恋人かっ!
と、でも突っ込みたくなるような甘え方もするあきらに九流は妹でなければ間違いなく速やかに闇へ葬っていたであろうと腕を組む。
しかし、相手は妹で更にこんな甘え方を今後、ざくろが自分へしてくれるかも知れないと思うと、むしろもっと甘え尽くせとばかりひたすら心の中で応援した。
あきらがトイレへ立ち、二人になるとざくろは焦ったように謝ってきた。
「先輩、あきらワガママですみません」
「別に。可愛いと思うけど」
笑顔でフォローするとざくろは苦笑した。
「寮に入って月1しか会えないからか甘え方が最近酷くて」
「寂しいってことだろ?あれぐらいストレートに甘えられたら俺は嬉しいけどな」
頭を撫でながら言うとざくろは無表情になる。
何か様子がおかしく感じて口を開いた時、あきらが戻ってきてざくろに抱き着いた。
「お兄ちゃん!」
「ねぇ、あきら!もう6時だし送ってくよ」
時計を見てざくろが言うとあきらは嫌そうに顔を顰めて甘えた声を出した。
「えー。まだお兄ちゃんといたい・・・。離れたくないー」
ぎゅーっと抱きついてくるあきらに困っていると九流が提案した。
「じゃあ、あきらちゃんも一緒に晩飯食べる?」
「え!いいんですかー!?行く!行きたーい」
嬉しいと喜ぶあきらにざくろは驚いた顔で九流を見た。
九流は笑って三人で食事へ行こうと言うと少し躊躇ったざくろは小さく頷いて了承した。
「先輩がいいなら・・・」
その言葉にあきらは無邪気に両手を挙げて喜んで九流へ抱き着いた。
たった数時間で本当に二人は仲良くなったのだと思い知った。
嬉しいはずなのに心が何故かモヤモヤして、そんな自分が嫌でざくろは二人から視線を逃げるように背けた。
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