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第80話
「俺は可愛気もないし、愛嬌もありません。別に甘えたくもないし甘える気もないんで放っておいて下さい!そんなに愛嬌が良く甘えられたいならそうしてくれる女の子と付き合えばいいんじゃないですか?」
拳を握り締め、ざくろは早口で一気にまくし立てた。
感情をここまで露わにするざくろが珍しくて九流は眼を見張る。
「・・・ざくろ?」
落ち着けと続けようとした時、泣きそうな顔で睨まれてお金を投げつけられた。
「俺はやっぱり先輩の性欲しか処理できません!俺にその他の事を望むならやっぱり契約は解約しましょう!解約の違約金、四千万でしたっけ?必ず2年以内に返します!どんな事しても返します!だからもういいでしょう!」
叫ぶように怒鳴って扉を閉めたが、咄嗟に九流が足を滑り込ませてそれを阻止した。
「ちょっと落ち着け、バカ!何言ってんだ?また嫉妬でもしてんのか?」
力技で部屋の扉を開き、腕を掴むとざくろはその手を引き離そうと躍起になった。
「離して下さい!嫉妬なんてしてません!昼間のあれはどうかしてたんです!!暑さで思考がおかしかっただけです!」
「分かった!分かったから落ち着け!冷静になれ!」
「冷静ですよ!冷静だからこうしてちゃんと答えが出てるんです!俺は結局あなたの要望に応えられないポンコツだったんです。元々、二千万なんて価値ないんです!それに気付けて良かった!気付かせてくれて本当、ありがとうござっ・・・・ぅうンっ・・・・」
永遠と続きそうな当て付けがましい自虐的な言葉をこれ以上聞きたくなくて九流はざくろを抱きしめて唇を奪った。
それを拒もうとするざくろの顎を掴んで自分の方へ向かせると舌を入れて口内を蹂躙した。
「んぅ・・・ふァ・・・ッ・・・はぁ・・・ァんっ、ぁう・・」
強く舌を吸われ上顎を丹念に舐められ思考が回らなくなってくる。
足がガクガクと震えて腰が抜ける感覚が怖くなり、九流の腕へ必死にしがみついた。
「・・・ァァ・・ふ・・・はぁ・・・ぁ・・」
目尻に溜まった涙が頬を伝い、流れ落ちると九流はその涙を親指の腹で拭き取りながら唇を離した。
その場にしゃがみ込んで浅い呼吸を繰り返すざくろに九流もしゃがんで目と目を合わせた。
「何にキレてんのか分かんねーけど、俺も怒ってるってことは分かれよ?」
低い声で言われ、泣きそうな顔で唇を噛み締めて瞳を反らした。
「目、反らすなっ!」
怒鳴られてビクっと体を跳ねさせるざくろの顎を掴んで自分を見るように上向かせる。
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