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第85話
「ちょっ、ちょっと!何考えてるんですか!?」
朝っぱらから下半身へ手を伸ばしては首筋に顔を埋めてくる九流にざくろは大声をあげて制した。
「お前が素直になれば」
簡単だろ?と囁く九流に何を求められているのか分からなくてパニックになる。
太ももの付け根を撫で上げると、身を捩りながら眉を寄せるざくろに顔を上げて質問した。
「俺の事、どう思ってる?」
この質問にドキッと心臓を跳ねさせ、九流を見つめて硬直する。
「・・・」
黙っていると動きを止めていた九流の手が再び体中を這い始めて、赤く顔を染めて小さな声で答えた。
「す・・・、すき・・・・」
欲しかった言葉はとても小さかったが確実に九流の耳に届いた。
満足のいく答えを手に入れた九流は嬉しくて笑顔になる。
ざくろの体を解放して伏せられた瞳を覗き込むと、九流は甘い口づけを落として囁いた。
「ざくろ・・・、俺と付き合おう」
「なんでだよ!?」
「なんででもですっ!」
2人は一緒に朝ごはんを食べに食堂へ行へ来ていた。
ブッフェ形式の朝食で、皿に料理を盛ると同じテーブルに着く。
甘い告白を囁き合った後なのだが、2人の雰囲気はあまり良くなくてむしろ悪いと言った方が正しい感じがした。
責めるように九流が何度目かになる質問をする。
「なんで、付き合ってくれねーんだ?俺が好きなんだろ?」
「・・・・」
「答えろよ!」
テーブルをお皿が浮くほど強く叩いて凄むものの、ざくろは一向に微動だにせず朝食の食パンを頬張った。
自分の態度が気に入らないと睨みつけてくる九流に小さく溜息を吐くと、ざくろは伏せた瞳をあげて言った。
「先輩、また後で話し合いましょう?」
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