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第95話
「じゃあ、先輩。また時間が出来たら連絡下さい。俺はあきらといるんで」
夏休みに入り、領内の生徒たちは一週間帰省する。
しかし、生徒会業務が忙しい九流は他の生徒達より一日遅れて帰省する事になっていた。
ざくろは数少ない荷物をボストンバッグへ詰め込んでそれを肩から担ぎ、帰省する挨拶を言いに九流の元へ来ていた。
「ああ。あきらちゃんに宜しく。俺も明日は実家帰るから電話する。気を付けて帰れよ」
「はい。先輩も疲れが溜まってるみたいですし無理しないで下さい。俺の事は後回しでいいんで」
にこりと笑うざくろに九流は溜息を吐く。
「お前が後回しでいいわけないだろ。ほら、さっさと帰ってあきらちゃんの側にいてやれ」
ポンポンと頭を叩いてくる九流に少し頬を染め、一度キスを交わしてから部屋を後にした。
「ただいま」
あきらがいなければ決して帰ってはこない実家へざくろは帰ってきた。
4LDKの大きな家はあきらが最低限の掃除をしているおかげで綺麗さを保っていたが、がらんとした室内は無機質でとても嫌な空気感にざくろは顔を顰める。
玄関で靴を脱いで家へ上がるとリビングから物音が聞こえてきて、あきらではない誰かの気配にざくろのテンションは更に下がった。
「あら、ざくろ?あんた、学校は?」
リビングから出てきたのは真っ赤なレースの卑猥な下着のみを身に纏う母親だった。
自分と同じ黒髪は背中まで伸ばされていて鬱陶しそうだ。
色白の素肌を下着姿で恥ずかしげもなく息子の前で披露するこの女にざくろは頭痛を覚えた。
「・・・・盆休みの一週間だけ帰省できるんだ。あきらがいるから帰ってきただけ」
「ふ〜ん」
自分に良く似た容姿の母親は全く興味無さそうにざくろの言葉を聞き流す。
そんな母親を無視して、玄関から直ぐ近くにある階段に登ってあきらの部屋へと向かった。
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