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第99話
青い顔で固まるざくろにのほほんとあきらが笑って聞いてきた。
「先輩なんてー?来るって?」
呑気な妹にざくろは声を荒げる。
「あきら!先輩を巻き込むな!!」
いつも決してこの様に声を荒げたりしない兄にあきらは目を見開いた。
驚きで固まる妹にざくろはしまったと口を押さえて怒鳴ってしまった事を悔いた。
「ご、ごめん!あきら・・・。大声だして」
「ううん・・・。私も勝手な事してごめんなさい」
素直に謝ってくるあきらに頭を撫でてやる。
「先輩には学校で本当に良くしてもらってるんだ・・・。でもね、先輩は卒業したら俺とは無関係になる人だから特別な関係にはなりたくないんだよ。変にじゃれあいたくない」
「・・・先輩がそう言ったの?」
首を傾げるあきらに首を横へ振った。
「俺がそうしたいんだ。先輩とは卒業したら一生会いたくない」
自分の恋心に気付いた時に己の中の警報機が鳴っていた。
今もまだその警報機は赤く点滅している
好きと自覚したからにはこの警報を無視することはできなかった
自分のような下賎な人間が九流に相応しくないことはこの学校へ入学した時点で自覚済みだ。
生徒としてこの学校に置いてもらっている限りこの関係も続けていても許されるのではと自分を甘やかせているが卒業したらそうはいかない。
九流が何と言っても自分は離れる覚悟だ。
好きならばなおさら・・・
九流の将来を潰したくない
自分には未来という未来がないただのゴミのような人生だ
唯一望む事はあきらの幸せを見守ることぐらいだろう。
それに加えて、遠くからでもいい・・・
先輩の幸せも見守らせて欲しい
決して口出ししないから
関わらないから
ただ見てるだけでいい
そういう恋で自分は満足できる
いや・・・、満足してみせる
ざくろから表情が消え、その姿をあきらは心配気に眉を垂らして兄の心の闇に口を閉ざした。
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