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第100話

「先輩、何が好きなのかな?」 気まずい雰囲気から一転、ざくろは瞳を閉じて一度深呼吸をすると自分の気持ちを封印していつも妹に見せる柔らかい笑顔を向けた。 手を握って何事もなかったように歩きながら話しかけてくるざくろにあきらは安心感に胸をなで下ろすも、兄の本音が分からなくてモヤモヤした。 「あきらはマカロニサラダでしょ?」 にこっと優しく微笑まれ、頷いて腕へ抱きつく。 「ハンバーグ食べたい」 物事を自分で決めるのが苦手な兄にあきらはせめてもの償いだと、ざくろの得意料理を強請った。 「ハンバーグ?いいよ。じゃあ、今日はハンバーグにしよう。スープはコーンスープでいいかな?」 「うん!お兄ちゃんのコーンスープ大好き」 いつものように明るい声で答えて頷くあきらにざくろは笑顔で頷いてスーパーへ入っていった。 スーパーで買い物を終えた二人は家へ戻った。 母親は消えていて二人して安堵の息を吐く。 居ないであろうと思ってはいたが、実際確認するまで不安感は拭いきれなかった。 「あきら。俺、ご飯作るから部屋綺麗に掃除してもらっていい?」 「もちろん!」 リビングのエアコンを起動させながらあきらは頷く。 そして、母親が脱ぎ散らかしたと思われる衣類を拾い集め、飲み散らかされた缶ビールの空き缶を処分していった。 ソファの上も机の上も床も綺麗に物を片付けると部屋に掃除機をかけていった。 その間にざくろは米を研いでご飯を炊飯器で炊き、スーパーから買ってきた食材でハンバーグのタネを作る。 フードプロセッサーを使いコーンスープを作って、レタスやトマト、キュウリを綺麗に水洗いしてサラダを作り始めた。 それに加えてあきらリクエストのマカロニを茹でていく。 各々がトントン拍子に業務をこなして部屋は綺麗に片付き、夕飯の準備が整っていった。 後はハンバーグを焼いたら完成な所までいくとざくろは時計を見た。 時刻は7時になったばかりでもうすぐ九流が来るはずだと、じっくり弱火でハンバーグを蒸し焼きにしていった。

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