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第102話

「美味しい!」 ハンバーグを食べてもサラダを食べてもスープを飲んでも、ただ洗って炊飯器任せに炊いた白ご飯を食べても九流は美味しいと言って全てを残さず食べてくれた。 嬉しい気持ちより恥ずかしい気持ちの方がだんだんと大きくなって、ざくろの箸はなかなか進まずにいると九流が皿の上のハンバーグを見て聞いてきた。 「残すのか?」 「え?」 「それ、残すなら俺が食べたいなって」 指で食べかけのハンバーグを指されてざくろは青ざめた。 「す、すみません!足りませんでしたか!?つ、作ります、直ぐ!!」 焦って椅子から立ち上がるざくろを九流は制した。 「違うって。十分足りてる。ただ、残すなら勿体無いなって思っただけだ」 「あ・・・、そうなんですね・・・・」 ホッと胸を撫で下ろして座り直すと自分の使っていた箸を裏返し、食べていた箇所を切り取って綺麗な部分を九流の皿へ乗せた。 「良ければどうぞ」 律儀な行動にざくろらしいと苦笑するとそれを見ていたあきらが大きく口を開いた。 「お兄ちゃん、私にもあーん・・・」 「え?」 「ハンバーグ、分けて〜」 あきらのお皿へ視線を落とすとそこには半分ほどハンバーグがまだ残っていた。 「あきら、自分の食べてから言いなさい」 「だって、お兄ちゃんのがいいもん」 意味の分からないその言葉を無視していたが欲しい欲しいと煩いあきらに仕方ないとざくろは一口大に切ったハンバーグをあきらの口の中へ放り込んでやった。 「美味しい〜!お兄ちゃんに食べさせてもらうと2倍美味しくなる」 「それは良かったね」 大袈裟だなと苦笑すると、九流がふーんっと頷いて身を乗り出し、口を開いた。 「んじゃ、俺にも食わせて」 「へ?」 九流の突拍子ない行動にざくろは硬直する。 「ほら、早くしろよ。2倍うまくなるならその方がいい」 口を開いたまま待つ九流に緊張から手が震える。皿の上のハンバーグをなんとか切って、九流の口元へ運ぶと嬉しそうに笑って頬張った。 「本当だな3倍美味しくなった」 眩しいばかりの笑顔に胸が満たされ、ざくろはもう満腹でスープすら入りそうになかった。

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