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第104話
残された九流とざくろの間に微妙な空気が漂って、ゴホンっと一つ咳払いしたざくろは、九流の側を離れようとした時それを引き留めるように手を引かれて膝の上に座らされた。
「な、何ですか!?」
「ん?甘えさせてやろうと思って」
「いりませんよ!甘えさせてやりたいならあきらを甘えさせてやって下さい」
赤い顔で暴れ、膝の上から降りようとすると、腰をかかえるように抱かれてメロンをまた一つ口元へ運ばれた。
「いいから、食べてみ?」
ほらっと急かされざくろは渋々口を開く。
甘い果汁いっぱいのメロンの味が口内に広がってコクンと飲み込むと九流へメロンを勧めた。
「お、美味しいです。先輩も食べたらどうですか?メロン嫌いですか?」
「いや、普通に好き。じゃあ、ざくろが食わせてくれよ」
「・・・・・どうぞ」
言われるであろうと少しは考えていた分、そんなに動揺せずメロンにフォークを突き刺して口元へ運んでやった。
「フォークじゃなくて手で食べさせろよ」
「手!?」
何故、そんなに手がいいのか分からずにいたがさっさとこの状況を打破したいざくろは逆らわずに言われた通り、手でメロンを九流の口へ運んだ。
「ンっ・・・」
バクっと大きな口でメロンと一緒に指ごと食べられ、指先をチュッと吸い取られる。
いきなりの行動にビクッと身体を跳ねさせて変な声を出してしまい赤面する。
「エロい声・・・。感じた?」
色気を含む声色に羞恥心が刺激された。
「あ、あの・・・降ろしてください」
「ヤダね。あきらちゃん来るまでもうちょいこのまま」
ギュッとキツく抱きすくめられてざくろは硬直し、心臓がけたたましい速さで鼓動を打って痛かった。
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