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第105話

「席、外してごめんなさい」 パタパタと足音を立てて部屋から戻ってきたあきらに焦ったように九流の膝の上から飛び降りる。 「は、早かったね!お友達から?」 まだバクバクと鳴り響く心臓を抑えて聞くと、あきらは視線を宙に彷徨わせて頬を染めた。 その様子に九流はピンっときたがざくろは首を傾げる。 「え?友達じゃないの?・・・誰?」 言い淀むあきらにイジメに合ってるのではと変な方向へ心配し始めたざくろに顔を俯かせて小さな声であきらは白状した。 「彼氏なの・・・」 その言葉にざくろが固まる。 「その・・・、最近告白されて。前から私もいいなって思ってて、付き合う事にしたの」 チラチラと様子を見ながら恥ずかしそうに告白してくるあきらに頭の中が真っ白になる。 「ざくろ?」 無表情で無反応のざくろに九流が違和感を感じ、名前を呼ぶと弾かれたように顔を上げた。 「え?あ・・・、うん。彼氏かぁ・・・そっかぁ・・・・」 力なく笑うざくろに九流が小さな溜息と共に呟く。 「まぁ、お前はシスコンだからな」 九流の言葉に何の慰め合いか分からないが、あきらは兄に抱きつくと大声で叫んだ。 「私もブラコンだよぉぉぉーーー」 そのあともざくろから離れず好き好きとあきらは連呼し続けた。 可愛い妹に彼氏が出来て寂しい気持ちと喜ばしい気持ちに苛まれ、ざくろの心の中が黒い何かに渦巻かれる。 自分を必要としてくれる人物が巣立っていくような感覚に足元がすくわれそうで気を引き締めないと崩れ落ちていきそうになった。 抱きついてくるあきらにこちらが抱きつくように抱きしめ返す。 「今度、その子に会わせてね」 自分でも上出来だと思える優しい声でなんとか告げると、息を小さく吐いて気持ちを落ち着かせる努力をした。

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