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第106話

「今日はありがとうな。今度は俺の家へ来いよ」 玄関で靴を履き終え、九流はざくろの頭を撫でながら言うとざくろは少し視線を落として控えめに頷いた。 社交辞令の頷き方にざくろを誘うよりあきらを誘う形にした方が事が早く運びそうで九流はあきらを見る。 「あきらちゃん、今週は予定どうなってるんだ?」 「私ですか?お兄ちゃんがこっちにいる間は2人でベタベタしてますよー」 ざくろの腕にべったりくっつくあきらに九流はそれならと笑顔で誘った。 「明日、俺の家へ遊びに来ないか?」 「えぇ!?九流先輩のお家ですか?」 「うん」 「行きたーい!」 拳を握り締めて純粋に喜び、二つ返事で了承するあきらに笑顔を向ける。 「じゃあ、ざくろ。明日あきらちゃん連れて俺の家へ来いよ。迎えの車、明日の朝10時に寄越すから」 「え!いや、そんなの困ります!」 「何でだよ。ただ車に乗るだけだ。待ってるからな」 有無を言わさぬ九流の迫力に押され口ごもっていると九流は手を軽く振って玄関の扉を開いた。 「おやすみ。明日、楽しみにしてる」 そう告げると九流は扉を閉めて出て行った。 九流を見送るとあきらはお風呂へ入りに行き、ざくろは部屋の片付けをした。 洗い物を済ましてテーブルを拭き終わると、ざくろは布巾を持ったままソファに座った。 消し忘れたテレビから名前も知らない芸人達がおもしろおかしく騒いでいる声が聞こえたが、ざくろにはただの雑音でしかなく、意気消沈してしまう。 理由はもちろん、あきらの彼氏だ。 自分でも予想以上の大ダメージに失笑する。

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