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第116話
side 九流
アホか俺は・・・
やってしまったと額を抑えてソファに沈む九流は自分の短気さに辟易していた。
ざくろの性格上、もっと色々な事に準備出来るよう時間を与えてやるべきだった。
自分の自己中な逸る気持ちを押し付けてしまった
いや、あわよくば甘えて欲しかったんだ・・・
あきらのように自然体の自分を10分の1でも晒け出して欲しかった。
手土産なんてどうでも良かった
ざくろが家へ来てくれるだけで嬉しかった
別に家じゃなくても会えるだけで満足だった
ケーキもまさか手作りだと知らなかったが、知った時は嬉しかったし迷惑なんて思うわけがない
何度言っても消極的でマイナス思考のざくろに九流はもっと言い方を考えてやるべきだと反省する。
わざわざ来てくれたのに・・・
怒鳴りつけて、責め立てて、せかっく作ってきてくれたケーキも突き返し、追い出すように帰らせるなんて・・・
考えれば考えるほど己の鬼のような言動に頭を抱えた。
もう、追いかけていいのかどうかも分からなくてソファの上で撃沈する。
「・・・・・くそっ」
とりあえず、謝るだけでもと九流はソファから立ち上がり部屋を飛び出した。
ざくろが最後、涙声になっていた事を思い出して胸が痛くなった。
泣いてないといいけど・・・
引き止めたら帰らずにいてくれるだろうか?
謝れば笑顔になるだろうか?
側にいて欲しい・・・
自分の気持ちを上手く伝えてざくろの心を宥めてやりたい
それをどうすればいいのか分からない九流は悩みながらもざくろを引き止めたくて歩く速度を速めた。
side 九流 おわり
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