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第117話

呼び止められて振り返るとそこには九流に良く似た黒髪の高身長の端正な顔立ちをした男が立っていた。 九流より大人っぽくて雰囲気も落ち着いた優しい笑顔の人物にざくろは固まる。 「俺、猛の兄で(いさむ)って言うんだ。君は?」 「お兄さん!?あ、西條ざくろと言います」 九流の兄という事に驚いてざくろは背筋を伸ばし、頭を下げると勇はクスクス笑いながらざくろの前までやってきた。 「ひゃ〜、可愛い子だねぇ。猛の彼女?あいつ、男子寮に入っても女と途切れないのか」 感心しながらまじまじ自分を見つめてくる勇に首を横へ振った。 「違います。俺、男です!先輩の後輩です!」 「えぇ!?男!?マジで!?そりゃ、ごめんね。気を悪くさせたかな?」 無口で無愛想な九流と違い勇は始終笑顔を絶やさない男だった。 「涙が付いてる。あいつに泣かされた?」 睫毛が濡れていたのか勇が優しい笑顔で聞いてきて、ざくろは焦って手の甲で乱暴に目元を擦った。 「目が荒れるよ?ねぇ、猛とケンカしたなら俺とお茶しよう?美味しいお菓子があるからさ」 手を引かれ優しく誘われ、ざくろは狼狽えた。 「い、いえっ!俺、もうお邪魔する所で・・・」 「用事?送っていこうか?」 「いえいえ!お気遣いなく!」 「遠慮しなくていいよ。西條君、可愛いから一緒にいれるだけでなんか得した気になるから」 柔和な笑顔でざくろの頬を撫でてくる勇にざくろは赤面した。 そんな事を言われたのは生まれて初めてで素直に嬉しかった。 それも相手が九流の兄ならば尚更だ。 「急いでないならやっぱりお茶だけでもしよーよー」 子供のようにざくろの手を引っぱる勇の姿が一瞬あきらと重なり気がつくと頷いてしまっていた。 「やったぁー!こっちおいでおいで〜」 繋いだ手をぶんぶん振り回して勇はざくろの手を引っぱる。 ざくろも勇の強引さに断れず頷いてしまった手前、言われるがまま付いて行った。

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