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第118話

「そこ座っていいよ。楽にしてね。紅茶とコーヒーどっちがいい?」 「どちらでも」 「じゃあ、紅茶にしよ。俺、コーヒー苦手なんだ」 淡々と物事を決めていく勇はとてもフレンドリーで空気がとても軽い。 自分のことも気さくに話すあたり、ざくろの警戒心も解けてくる。 「俺もコーヒーは苦手なんです」 「え?そうなの!?じゃあ、俺ら仲間だね〜」 さらりと本音が出てざくろ自身驚く中、勇はニコニコ笑いながら紅茶を淹れてくれた。 「レモンティー派?ミルクティー派?」 「レモンティー派です」 「趣味合うね!俺もレモン派。だけど、レモンを取りに行くの面倒だから今日はストレートで勘弁してね」 笑顔で言われ、ざくろはこくこく頷いた。 わざわざ自分の為にレモンを取りに行かれた暁には申し訳なさで縮こまっていたであろう。 勇の砕けたフレンドリー感にざくろは救われる。 「このチョコレート、猛が昨日買ってきてくれたんだけどすっごい美味いんだ。摘み食いしたもんだけど食べてみて。マジで美味しいから」 豪華な箱に入ったチョコレートの蓋を開けるとチョコレートが2粒だけ無くなっていて恐らく勇が食べたのだろうと想像する。 「昨日、先輩が俺の家へも持ってきてくれました。ここの美味しいですよね。妹も好きなんです」 「そうなの?あいつ、いきなり夕飯要らないって言うからてっきり生徒会の仕事だと思ってたのに西條君とデートだったんだ。ってか、妹いるんだね。西條君に似てる?可愛いんだろうな〜。あっ!チョコ、それなら要らない?じゃあ、こっちのクッキーは?ここのキャラメルクッキーが極上なんだよ。それか、ケーキとかの方がいい?多分キッチンに行けば何かしらあると思うんだけど、でも取りに行くの面倒いなぁ」 笑いながらぽんぽんテンポ良く話をしては自己完結していく勇にざくろは目を丸くした。 「西條君、ってか、ざくろ君って呼んでいいかな?他人行儀っぽいし!俺のことは勇さんって呼んでね。でさ、ケーキの事考えたらやっぱりケーキ食べたくなってきたから取りに行ってくるよ」 ひと段落したのか勇はピタリと話すのを止めた。 ざくろはキョトンとしていると二人の間に妙な沈黙が流れる。 「ふっ、・・・フフッ、アハハハハ・・・す、すみません。なんか、凄いマシンガントークで・・・。九流先輩とは全く性格似てないんですね」 口元を押さえて妙な沈黙が変におかしくてざくろは噴出してしまった。 無邪気に笑うざくろに勇は柔らかく微笑む。 「やっと笑ったね!本当、可愛いなぁ。ずっとそうして笑っておけばいいのに」 優しい声で言われ、その声が少し九流に似ていてざくろは真顔になった顔を俯かせ、赤面した。

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