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第119話

「ざくろ君は恥ずかしがり屋なんだねぇ〜。それもまた初々しくていいよ」 ニコニコ笑う勇にざくろは苦笑する。 その時、膝の上に乗せていたシフォンケーキの入っている箱を指差された。 「さっきから気になってたんだけど、それ何?」 「え?・・・あぁ、ゴミです」 「ゴミ?それなら捨てとくよ」 自分で処理すると断る前に勇の手の方が早く箱に触れてざくろから取り上げられた。 すると、ざくろの了解も得ず勇は勝手に箱を開けて中身を確認すると目を見開いて笑顔になる。 「シフォンケーキだ!なに、これ捨てんの?何で!?」 「え、いや・・・」 何と言えばいいのか躊躇っていると勇は嬉々として、箱からシフォンケーキを取り出す。 「毒とか入ってないよね?」 「そんなの入ってませんよ!」 全力で否定すると勇はにっこり笑ってシフォンケーキを手でちぎって口へ放り込み始めた。 「うまっ!フワフワだぁー!ざくろ君も食べる?」 ざくろのものなのにあたかも自分のもののように言ってくる勇に言葉を失っていると、手でちぎったシフォンケーキを口元へ差し出された。 「ほら、美味しいから食べてごらん」 言われるままそっと口を開くとポンッと口の中へ放り込まれてもぐもぐ食べた。 それを見て勇は先ほど淹れた紅茶を差し出してやり、自分はばくばくとシフォンケーキを再び頬張る。 「本当美味しいな。何でゴミ扱いしたの?」 「・・・・・」 黙るざくろに勇は質問を変える。 「ねぇ、またここの食べたいからこのシフォンケーキのお店教えてよ」 「え!?」 「箱に店の名前書いてないから」 ケーキが入っていた箱をあちこち見ながら言う勇に困った顔になった。 「え?隠れ家的な店なの?教えられない?」 「いや、そう言うんじゃなくて・・・」 「じゃあ何?」 「えっと・・・、それ俺が作ったものなんです」 顔を俯かせ消え入りそうな声で答えると勇は絶叫した。 「ええぇぇぇぇぇぇーーー!!!これ、作ったのっ!!?」 ケーキとざくろを交互に何度も見て叫ぶ勇のあまりの声の大きさにびっくりし過て固まった。 すると、勇はテーブルから身を乗り出してざくろの両肩を掴み、更に驚くお願いをしてきた。 「ざくろ君!このケーキの作り方教えて!?」

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