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第122話
九流は投げ入れるように部屋へざくろを連れ戻し、睨みつけた。
怒る九流に申し訳ない気持ちと恐怖から泣きそうな顔を下げ、ざくろは固まる。
重い空気が流れて長い沈黙の中、先に口を開いたのはざくろだった。
「・・・すみませんでした」
その謝罪に九流の目が鋭くなった。
「何に対しの謝罪だ?」
「え・・・、その・・・」
頭の中を整理して一つ一つ理由を考えながら慎重に答えていった。
「ケーキなんて持ってきてすみませんでした。後、勇さんとお話してすみませんでした・・・。直ぐに帰らなくてすみません・・・でした・・・」
小さな声でぽつりぽつり謝るざくろは最後まで言い終えると、意を決したように息を吸ってがばっと頭を下げた。
「ごめんなさい。直ぐに帰ります!」
とりあえず、自分がここにいることが駄目なのだと答えを導き出し顔を上げると扉へ手をかける。
しかし、その手を九流に掴まれて引き止めれた。
「ケーキ俺に作ってきといてなんで兄貴に食わせてんだ!?ってか、兄貴にほいほいついて行きやがって!そんなに俺といたくないなら最初から来るな!」
九流が怒りに任せて怒鳴ると、ざくろはビクっと身体を竦め怯えた。
「ご、ごめんなさいっ!直ぐに帰ります!!」
だから怒らないでと身を縮ませると、先程ざくろが勇の服の裾を握っていた事を九流は思い出し、苛立ちがピークに達して更に大きな声で怒鳴りつけた。
「お前は俺のもんだろうがっ!他の奴に懐いてんじゃねー!」
空気が震える程の怒気に晒されて怖くて目に涙を浮かべる。
「ごめん・・・なさい・・・・、ごめんなさい・・・」
震える声で謝罪してくるざくろに九流は徐々に我を取り戻していった。
ざくろの手首を掴んでいた手の力を抜くと、手首に真っ赤な跡が残って九流は青ざめ、その手を離した。
「本当に・・・、本当にごめんなさい・・・・。せっかくのお休みに気分を害させてしまいました。すみませんでした」
ぼろぼろ涙を流しながら謝ってくるざくろを前に九流はもう訳が分からなくなった。
こんなはずじゃなかったのに・・・
どうすれば気持ちが伝わるのか、どうすればざくろが泣き止むのか分からない
困り果てて、視線を向けると涙を拭うその姿に奥歯を噛み締め細い肩を抱き寄せた。
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