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第124話
「今日はありがとうございました」
西條兄妹は九流が何度も夕飯を食べていくよう勧めたが、ざくろの断固拒否によって九流は断念し、二人を見送ることにした。
玄関先で頭を下げるざくろの頭を撫でる。
次は恐らく学校の寮で会う事になるだろう。
「九流先輩、ありがとうございました!DVDも嬉しかったです!」
ざくろの腕に抱き着きながら笑って頭を下げるあきらに頷くと、二人は九流家を後にした。
自分の部屋に戻って九流はソファへ座り、溜息を吐いた。
勇の元から奪うように連れ帰り、言い合いになった後のことを瞳を閉じて思い出す。
宥めるように抱きしめ話し合いを求めた時、あきらが部屋に戻ってきて話し合いはままならなかった。
気まづい雰囲気が流れたがあきらの明るさに場の空気が変わって持ち越し、三人はそのままゲームをしたりDVDを見たりして時間を過ごした。
楽しそうに笑うあきらを見て優しく微笑むざくろに九流はいつものざくろだと安心した。
その反面、寮へ戻って早くゆっくりと話をしたいとも思った。
ざくろの時に暗く、怯えるような不可解な空気感を九流は度々感じていた。
まだ、自分に気を許してないからだと思っていたが、それはあきらへ対しても行うもので九流は違和感を覚えた。
あきらと初めて会った日、自分は兄に育てられたと言っていた。
育児放棄の両親に愛情を貰えなかったと聞いた。
あきらがそうなら、もちろんざくろもそうなのだろう。
結構ヘビーな話だと思ったがあきらの様子だとまだ続きもありそうだったことを九流は思い出す。
正直な所、ざくろの過去に興味はない。
今、自分の側にざくろがいればそれで良かった。
だけど、その過去がざくろの傷になっているのなら話は別だ。
自発的に話してくれるなら嬉しいがどれだけ待ってもざくろから話してくれることは恐らくないだろう。
九流は少し申し訳なさを感じたものの二人を見送ったあと、細田を部屋へ呼んだ。
「猛様、お呼びでしょうか?」
丁度、細田が部屋へ来て恭しく頭を下げてくる。
九流はソファへ座りなおすと、細田へ命令した。
「西條ざくろの事、調べろ。分かる事はなんでも全て・・・・」
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