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第125話

西條 ざくろ。10月3日生まれ。 公園のトイレにて実母の西條 あげはによって出産された。 あげはは出血が酷くその場で昏睡し、生まれたばかりのざくろとそのままトイレにいた所を公園へ遊びに来た別の親子に発見され一命を取り留めた。 警察と児童保育の元、厳重に注意を受けてあげはとざくろはあげはの夫であり、ざくろの父親である西條 :京介(きょうすけ)の元へ帰った。 公園のトイレで出産する母親にそれを承認する父親。 生まれた時からまともな環境ではないざくろは乳児の時からどれ程泣き叫んでも無視され続けていた。 生まれた経緯から児童保育所が厳重に監視してくれていたことからざくろは市の保護下の施設と自分の家を物心がつく前から行き来していた。 2歳の時、両親のいつものきまぐれで施設から無理矢理連れ帰られたざくろは食事をもらえることもままならず殴る蹴るの虐待を受けていた。 若くしてざくろを身篭ったあげはは、単純にざくろが邪魔で仕方なく、また父親は夜の仕事をしているあげはの浮気を知り、ざくろが自分の子供でないことを悟っていた。 事実、ざくろは京介の子供ではなかった。あげはが行きずりで一夜を共にした男との子供だったのだ。 そんなこともあり、ざくろへの愛情は京介には微塵もなく、憂さを晴らすだけの物でしかなかった。 いつ殺されてもおかしくない状態のさなか、あげはが京介との間に第二子であるあきらを妊娠した。 堕胎を考えたあげはだったが堕胎するお金も勿体無いと言って、ざくろと同じようにあきらを公園のトイレで出産した。 どんな仕打ちをされど純真無垢な子供は母親が心配で公園まで様子を見に行った。 トイレからフラフラ出てくる母親を見上げると、あげははざくろを一瞥してそのまま何処かへ行ってしまった。 どうしたものかと立ち竦んでいたら、トイレから聞こえる小さな泣き声に誘われて個室の扉を押し開いた。 そこには血まみれの小さなあきらが真っ赤な顔で泣いていて、ざくろは幼いながらも助けなければと必死にあきらを抱き抱え病院へと向かった。 ざくろのその行動に西條夫婦は特に関心を示しす事はなかったが、ざくろの時同様あきらの世話も一切しなかった。 あきらが泣くと、うるさいと顔を顰め、機嫌が悪い時は殴ろうとする両親から必死に身を挺して妹を守った。 ミルクなど貰えるわけもなく、あきらが泣くたびに施設へ走ってはミルクを調達していた。 三歳になったばかりの幼いざくろは自分よりもはるかに小さなあきらを何よりも優先的に考え、必死に育てた。

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