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第132話
怒りに任せて怒鳴り声を上げた九流は瞬時に後悔し、自分の昂ぶる気持ちがどうしても抑え込めず、深呼吸した。
一拍置いて、額を抑えて絞り出すような声でざくろに言う。
「お前、感情が欠落し過ぎだ。親に恵まれなかった事は俺も不幸だったとは思う。でも、こうして親から離れられるぐらい育ったならもっと自分をちゃんと構築していけよ」
「・・・・・」
反応を返さないざくろに九流は額から手を離して震える声で聞いた。
「俺の事、もう好きじゃないのか?」
この質問に小さな声が返ってくる。
「・・・好きですよ」
「だったら、俺が卒業しても側にいろ!」
間髪入れず命令するように怒鳴るとざくろは驚いた顔をし、次に困ったように笑って首を横へ振った。
「俺が離れないでくれって頼んでも、側にいてくれって言ってもお前は俺の前から消えるのに何で好きとか嘘つくんだよ?」
「嘘なんかじゃありません。本当に好きです・・・」
「じゃあ、どうしていつも俺から離れる事ばかり考えて離れる事ばかり言うんだ?好きなら側にいたいって思わないのか?」
「思いますよ!思うけど、自分が側にいて好きな人の邪魔になるのはもっと嫌なんです!」
気持ちの高ぶりをぶつけてくる九流にざくろも声を荒げて感情的に言い返した。
いつも淡々として無表情のざくろも声が震えて辛そうな表情を浮かべてることに九流は今なら本音を聞けるかもしれないと問いかけてみた。
「ざくろ、お前にとって大切なものってなんだ・・・?」
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