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第133話

「大切なもの?」 「ああ。お前にとって譲れないものだ。教えて欲しい」 真剣な表情の九流に視線を落として少し考えてからポツリと答えた。 「あきら・・・」 そして、視線をあげて九流を見つめて呟いた。 「あとは、九流先輩です・・・」 九流はその返答に胸が熱くなる。 だが、次に襲った焦燥感にざくろを睨みつけ厳しい現実を叩きつけた。 「違うだろ。ざくろ・・・、お前はお前自身が一番大切なんだ」 言われた意味が分からないざくろは眉間に皺を寄せた。 「・・・あきらが大切なんじゃない。自分がいなければ生きていけないあきらがお前には必要なんだ。必要なものと大切なものは似ているが違うものだ。あきらが独り立ちした時、お前はまた自分だけに縋って必要としてくれる人間を見つけるよ。その時、あきらはお前の大切なものでも必要なものでもなくなってるだろうな。お前の身も心も必要とする幼いあきらとよく似たお荷物な人物がお前にとっての必要なものになる」 「・・・言われてる意味が分かりません。俺はあきらの事、本当に大切です!本当に大事だし、独り立ちしてからも見守っていきます!」 「必要ないと言われたら?あきらに邪魔だと拒否されたらどうする?」 「っ!!」 泣きそうに顔を歪めるざくろに心の傷の膿を出すように九流が畳み掛けた。 「お前は一人じゃ生きていくことが不可能な人間に自分を犠牲にする事で満足感を得てるんだよ。それに自分の価値を見出そうとしてお荷物な人物に依存してるだけだ」 「・・・・・」 「お前が本当に大切にしてるのはお前の生まれながら負った心の傷で、これ以上深くならないように痛まないようにと傷口が化膿しないように大切に大切に守ってるんだ!必要な人間や好きな人から邪魔だと要らないと言われないように自分を押し殺して我慢して逃げ惑ってる。ざくろ、お前は・・・」 「うるさいっ!」 九流がまだ言葉を紡ごうとした時、ざくろはテーブルの上のレモンティーが入ったカップを手で払いのけて大声で怒鳴った。 カップはソーサーと共に床へ落ち、大きな音と共に派手に割れた。 いつもなら焦って、謝り倒してくるのだが今のざくろは顔面蒼白で浅い呼吸を繰り返し、冷や汗を流して泣きそうな顔で九流を見つめていた。

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