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第134話
「ざくろ・・・」
名前を呼ぶとざくろは拳を握り締め、九流を睨みつけて叫ぶように大声を出した。
「うるさいっ!・・・うるさい、うるさい、うるさいっ!!!先輩に何が分かるんですか?俺、自分の本当の父親が誰かも知らないんですよ?生まれてすぐトイレで死ぬはずの人間だったんです。ゴミの中で育って、毎日死ねと言われて殴られて蹴られて育ったんです!それが俺の普通なんで、当たり前の日常だったんです!そこにゴミクズの俺を必要としてくれるあきらが現れたんだ!それに縋って何が駄目なんだよっ!あきらしかいなかった!俺の命に価値が見出されたのは・・・あきらにしか縋れなかった・・・・・」
怒鳴り声が泣き声に変わっていき、ざくろは両手で顔を覆って呟いた。
「あきらが要らないっていうなら死んでもいい・・・」
あきらをこの腕で初めて抱いた時から思い続けた言葉をざくろは初めて口にした。
この言葉があまりにも苦しくて悲しくてざくろは崩れ落ちるように床に座り込んで涙を流した。
「ざくろ・・・、俺にしろ」
九流は立ち上がりざくろの前へ行くとしゃがみ込んで項垂れるざくろの頭を撫でて優しい声で告げた。
「俺に依存しろ。俺に全てを預けろよ。大切にしてやるから。大事にしてやるから。死ぬまで必ず愛しぬいてやるから・・・・・」
固まるざくろをキツく九流は抱きしめた。
「俺が裏切ったら俺のこと殺していいぜ」
愛を囁くように甘い声で言ってのける九流にざくろはゆっくり顔から手を離して九流の目を見つめた。
「そんなこと言ってたら本当に先輩殺して俺も死にますよ」
真顔で言ってくるざくろに九流はブハッと噴き出して笑った。
「いいぜ。殺せよ。だけどたった今、この瞬間からお前は俺のもんだぞ?いいのか?妹よりもお前自身よりも何よりも俺を優先させろ」
不敵な笑顔で命令され、ざくろは二重の大きな瞳を見開き、長い睫毛を震わせた。
「・・・・・先輩、正気ですか?こんなゴミクズに?この報告書、真実ですよ?先輩が命賭ける程の・・・っン!!」
信じられないと自虐的に皮肉を言ってくるざくろの唇を九流は唇で塞ぐと、もう黙れと相手の呼吸すら奪う激しいキスをした。
酸素を求めて必死に息継ぎするざくろから唇を離すと、不機嫌な声で告げた。
「いちいちうるせぇ奴だな。お前は黙って頷けばいいんだよ。早く俺のもんになっちまえ」
乱暴な言葉にまだ躊躇っていると、九流が顎に手をかけて凄んできた。
「俺が好きなら勿体ぶらず俺のもんになれ。答え方が分かんねぇなら教えてやる。お前は黙って首を縦に振りゃいいんだよっ!」
吐き捨てるように言われて、ざくろは咄嗟にコクンと頷いてしまった。
その頷きに大きく息を吐いて嬉しそうに笑う九流の雰囲気が一気に優しくなる。
「契約成立だな」
九流のこの言葉と共に誓いのキスだと二人は優しく甘いキスをした。
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