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第135話

暫く抱きしめられていたらざくろも冷静さを取り戻し、九流の胸元から顔を上げて部屋の中を見た。目に飛び込んできたのは自分が振り払って割ってしまったカップとソーサーでサッと体温が低下するのを感じた。 「せ、先輩!すみません!」 九流から体を離し、絨毯に広がるレモンティーと割れたカップとソーサーの後始末に手を伸ばす。 しかし、その手を掴まれて代わりにひょいっと横抱きに抱えあげられた。 「ぅ、わぁっ!な、なんですか!?」 「片付けなんていいからベッドに行こうぜ」 「えぇ!?でも、レモンティーシミになりますよ!?」 「そしたら絨毯替えりゃいいだろう」 素っ気なく言われ、困惑したが九流の腕から落ちないようにしがみついた。 ベッドの上へそっと壊れ物を置くように優しく降ろされると気恥ずかしさに頬を赤く染める。 「恋人としてお前のこと抱かせろよ」 ゆっくり自分を組み敷いてくる九流はとても嬉しそうで、着ている服を脱ぎ捨てていった。 筋肉の付いた引き締まったカッコイイ体があらわになって見惚れてしまう。 大きな掌が服の裾から進入してきて、Tシャツを捲り上げ、脱がされていくと自分の貧弱な体が恥ずかしくて身を捩って逃げようとした時、九流が上へ覆い被さってきて額と額を合わせ、至近距離から見つめられた。 「何?恥ずかしいのか?」 意地悪な笑顔と言葉に目線を外して小さく頷く。 「・・・お前はいちいち可愛いな」 フッと吐息で笑い、頭から額、眉に瞼、鼻に頬と上から順番に優しく口付けしていった。 全身へ愛情を注ぐような優しいキスに居たたまれる程の苦しさと嬉しさに苛まれる。 「ざくろ・・・、俺の大切なものになってくれ」 優しい笑みを浮かべて囁く九流に涙が流れ、腕を首に回して抱き着いた。

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