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第141話

「先輩!お帰りなさい!」 部屋の扉を開いて帰ってきたら、息を切らせて汗だくのざくろに迎えられ九流は目を丸くした。 「そんなに汗掻いてどうした?」 「え?・・・あぁ!自分の部屋の掃除をしてきたんです!実は帰ってきたのも今で・・・」 あははと笑うざくろの汗を拭うように掌で撫でると、九流はネクタイを緩めて微笑んだ。 「お疲れさん」 制服から部屋着へ着替える九流を見つめながらざくろはポツリと呟いた。 「先輩、疲れてますよね・・・」 「え?」 ソファへドサッと腰掛け、自分を見てくる九流にざくろは詰め寄った。 「先輩!俺に出来ることありますか?」 「・・・どうしたんだよ?」 「先輩、疲れてるようだから何か力になりたくて!マッサージでも何でも言ってください!欲しいものとかありますか?買ってきますよ?」 任せてくださいと、拳を握り締めて目を輝かせるざくろに腕を組んで少し考えたあと、ニヤリと笑う。 「ざくろにして欲しいことならある」 嬉しそうに身を乗り出し、悪戯な顔で笑う九流に無理難題を吹っかけられるのではと笑顔が強張る。 「・・・・俺に出来ることなら」 何を言い出すのか分からないが、出来る限り九流の希望に寄り添いたいとざくろは気持ちを引き締めた。すると、九流はソファから立ち上がり、勉強用の机の上に置いていた手帳を持ち出した。 「8月31日のパーティーの日、丸一日フリーになれるんだ。その日、デートして俺に我儘三昧言って甘えて欲しい。俺が弱音を吐くぐらい困らせてみろ」 「・・・・・」 九流のして欲しい事がざくろには意味不明で思考が停止した。 「おい。聞いてんのか?」 不機嫌な声で我に返るとざくろは眉間に皺を寄せて聞き返した。 「それ、先輩に何かメリットってあるんですか?」 「ある。俺の心がめちゃくちゃ満たされる!だからそれまで甘えたり我儘が言えたり出来るように訓練しとけ」 「・・・・・はぁ」 九流の意図が全く分からなかったが、とりあえずざくろは頷いておいた。 夜、そろそろ寝ようとした九流におやすみなさいとざくろは部屋を出て行こうとした。 「どこ行くんだ?」 「自分の部屋ですよ。最近入り浸ってて邪魔でしたよね。すみませんでした」 頭を下げて謝罪してくる謙虚さに九流は不機嫌な顔で手を引っ張りベッドへ押し倒した。 「邪魔じゃねーよ。そう言うこと言うなっていつも言ってるだろ?31日にはそんなマイナス思考やめろよ」 「・・・すみません」 素直に謝るざくろを抱きしめたまま九流は横に寝転がった。 「お前って、本当可愛いよな」 しみじみ噛みしめるように人形の如く整った顔を見つめて呟き、赤く顔を染めてされるがまま身を任せるざくろに九流は願うように命令した。 「部屋なんて帰んなよ。ずっとここにいろ」 甘く耳元で囁かれ、ざくろは小さく頷くと瞳を閉じて九流からのキスを受け入れた。

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