149 / 229
第148話
「お姉ちゃん!もっと毅然としなきゃ!!」
「可愛く、毒吐かなきゃホテルに連れ込まれて強姦されちゃうよ!?」
「そうそう!見た目が良い子はキツイぐらいじゃないと舐められるんだよ!」
三人はざくろに詰め寄って説教するとほれ、もう一回と背中を押してさっさと影に潜んでしまった。
「ま、まだするのー!?」
もう、嫌だと縋るように叫ぶと三人はガッツポーズをきめ、口パクで応援してきた。
相談する相手間違えたかも・・・
空が夕刻に霞始め、なんだかんだとあれから数え切れない人達に声をかけられたざくろは少し慣れ始めてきていた。
と、言うより。
声をかけてくる男達が引く台詞をマスターしていた。
とりあえず、高飛車に金のかかる女を演じた。
これが九流に対して何の効力を持つのか全く分からないが早く帰りたい一心で三人に言われるままマスターしていく。
「可愛いね〜!お茶しない?なんでもご馳走するから」
「お腹空いてませんから」
「じゃあ、買い物行く?」
「欲しいもの買ってくれる?」
「なになに!?君のためなら何でもプレゼントするよ?」
「本当に?じゃあ、大きなダイヤの指輪とネックレス買って!」
なかなか顔が整った男は顔を紅潮させてざくろに付き纏っていたがにこりと微笑んでとんでも無い要求をされたことで顔を青ざめさせた。
初対面の名前も知らない男にまさかの高額商品を強請る行為は誰でも引くはず!
初対面じゃなくても引くはずだと、ざくろは心の中で拳を握り締める。
案の定、男は身も心も自分から一歩後退した。
「え?ダイヤ・・・?」
この引かれた状態から更にもう一歩踏み込む。
「そう!ダイヤモンドの指輪とネックレス!今から買いに行こう。あっ!あと車は外車以外嫌だからね」
肩を竦めてうふふと小悪魔さながらの笑顔を向けると男は固まって笑顔のまま、ズサササッと後退して行った。
その姿をごめんなさいと、心の中で謝ってざくろはそっぽを向く。
見る人を惹きつける容姿を持つざくろは先ほどから多くの人間に声をかけられ、その度に辛辣な対応を取ることでちょっとした有名になりつつあった。
そんなことから、これ以上ここでナンパ待ちをしても仕方ないと思ったあきら達三人はこっちを見てくるざくろに終了のサインを出してくれた。
やった!
良かった!!
これで解放される!!!
感涙して三人の元へ戻ろうと足を踏み出したとき、後ろから肩を掴まれた。
もう、疲れ切って心が荒んでいるざくろはその手を振り払い、振り向きざま相手を睨みつけて怒鳴った。
「もう、触んないで!ダイヤモンド買ってくれないなら話したく・・・っえぇ!!?」
決めた断り文句を叫ぶ途中、相手の顔をふいに見たざくろは目を見開いて驚愕した。
「ダイヤだぁ?・・・上等だ。他所の男に強請る必要ねーぐらい買ってやるよ」
不機嫌丸出しかつ、額に青筋を立ててキレまくる九流を前に、ありえない返答付きでざくろはサッと血の気が引いた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!