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第154話

メインのお肉とパンがきて、二人は食事を楽しむとコース料理終盤のメニューであるデザートと飲み物が目の前に置かれた。 「ティラミスだ!」 「好きなのか?」 「ケーキの中では一番好きです」 だから嬉しいとティラミスを頬張るざくろに九流は自分の分を差し出した。 「え?」 「俺の分も食べろよ。好きなんだろ?」 「いえ!先輩が食べて下さい!」 首を横へ振るざくろに遠慮しているのかと首を傾げた。 「遠慮とかじゃなくて、美味しいものは一緒に食べて共感したいんです」 なので、一緒に食べて欲しいと目向けてくるざくろに九流は再び何かで心臓をバンっと撃ち抜かれた。 「お前、今夜覚えとけよ・・・」 テーブルへ肘をついて自分の前髪を鷲掴み耳まで赤くする九流に今度はざくろが首を傾げた。 「あの、ご馳走様でした」 レストランを出て、頭を下げてくるざくろの肩を抱いて九流はタクシー会社へ車を回すように電話をした。車はあと5分ほどで到着するらしく二人で待っていたとき、九流が頭を撫でてきた。 「服は今度必ず買ってやる。だから今日はもう帰るぞ」 「寮にですか?」 「ああ」 「ええっ!じゃあ、尚更着替えたいんですけどっ!!」 フリルのシフォン生地のワンピースを掴んでこれで帰るのは嫌だと叫ぶざくろに九流がワンピースの裾を下へ引っ張った。 「捲り上げるのは俺の部屋の中でしろ」 「へ?下、短パン履いてますよ?」 ぺらりと捲ってデニムのホットパンツを見せるざくろに道行く男達がおぉーっと嬉しそうな声を上げた。 「足、見せるな!バカっ!!」 悪態と共に肩を抱き寄せられて驚くも、おずおずと九流の背中へ腕を回して抱きしめ返す。 「先輩、好きですっ。なんか、凄い好きぃー!」 むぎゅーっと思っていた気持ちが九流のスキンシップで溢れてきたのか胸元へ額を擦り付け好きだと連呼してくるざくろに九流の抱きしめる腕に力が加わった。 「お前、もう黙ってろ。頼むから・・・」 可愛すぎて腰が抜けそうになる。 これが自分のモノだと実感したくて気が焦る。 誰にも見せたくないのに誰かに自分のものだと見せつけたくて、九流は自分の中の矛盾に戸惑うばかりだった。

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