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第155話
タクシーが無事に二人の元へ来て、乗り込むとざくろは甘えるように自分の指を九流の指へ絡めるように握りしめた。
「先輩、寮へ戻ったら指相撲しませんか?俺ね、結構強いんですよ」
いつもよりどこか陽気に笑ってどうでもいい提案をして笑うざくろに九流が繋いだ手を自分の口元へ持っていきキスをする。
「指相撲なんかよりもっとする事あんだろ?」
「え?何ですか?」
本当に分かってない様子のざくろに苦笑すると、耳元で囁く。
途端、顔を赤くして俯く姿に九流は握りしめた手へ再び唇を寄せた。
寮へ着くなり寮生達の視線は一斉に集まって、どっと爆発的歓声が湧き上った。
「お、女ーーーーーー!!!」
「女の子っ!女の子が!!!!」
「副会長がまた女の子連れ込んだぁぁーーーー!」
「モテるからって女の子連れてくんのズルいぜぇぇぇーーーー!」
女装したざくろに男子寮生はギラギラした目を向けて、今にもとって食わんばかりの空気と九流へ羨ましいやら避難するやらの言葉を投げ掛けた。
「ち、ちが・・・!俺、俺・・・・」
この空気感が強烈過ぎて恐怖を感じるも、誤解を解きたいざくろはウイッグを取る。
「男です!ここの寮生の西條です!!」
九流から少し離れて叫ぶように白状すると、今度は一気に数十人の寮生に取り囲まれた。
「西條!西條ざくろ!!?」
「やべぇ、可愛いっ!」
「前から可愛いって思ってたけど可愛すぎてぶっ飛びそうだっ!」
「ウイッグ付けろよ!もっと髪長いのでもいいな!俺、買ってやるよ」
「馬鹿野郎!ショートの今ので十分可愛いだろっ!俺はショート派!ってか、その服似合いすぎじゃね?下、履いてんの?」
ギャアギャア騒ぎ立てる寮生にざくろはワンピースの裾をぺろんっと捲って、デニムのショートパンツを履いてるのを見せた。
「ちゃんと履いてます」
その時、白く細いくびれたウエストやおへそが見えて群がった男共は鼻血を出すか下半身を押さえる者に分かれた。
「スカートめくんなって言っただろっ!バカ!!」
寮生達を押し退け、ざくろの腕を引き寄せて抱きしめて周りから隠す九流に周りは大ブーイングの嵐が巻き起こった。
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