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第157話

side 九流 「先輩?」 不思議そうに声を掛けてくるざくろにくるりと背中を向ける。 やべぇ、直視できねぇ・・・ 心臓がバクバクして、自分でも驚くほど緊張しているまさかの事態に狼狽えた。 今まで数え切れないほどの女の子達を相手にし、プレイボーイの名を馳せてきたが、ここまで気負いすることは一度もなかった九流は焦る。 そんな心の内も知らず、ざくろはソファから立ち上がると躊躇いがちに俺の服の裾を握り締めてきた。 「先輩?どうしました?」 素っ気ない自分の対応に顔を曇らせるざくろに視線のみを向けた。 優しく抱きたいのにこのままじゃ乱暴にしちまう・・・ 自分の余裕の無さに心の中で舌打ちする。 「先輩、疲れましたか?」 どうやら俺が疲れたと勘違いをしたようで、ざくろは身支度を整え始めた。 「今日はありがとうございました。ゆっくり休んでください。楽しかったです」 笑顔で帰りの挨拶をし、帰ろうとするその手を掴んで抱き寄せると息を呑むざくろにまた緊張が走った。 「二人きりになったんだから、今からが甘え時だろ?」 頬を掌で包んで目と目を合わせ、囁くとざくろの顔が赤くなり、視線を泳がせ始めた。 「今日、あきらちゃんに色々伝授してもらったんだろ?」 頬を撫でていた掌を首筋へ移行させながら後頭部の髪を引いて上を向かせ、薄く開いた唇へ深く口付けた。 「んっ・・・」 舌を滑り込ませると、躊躇いながらも応えるように舌を絡ませてくるざくろに夢中になっていった。 今日のざくろは本当に可愛らしく甘える姿、そして自分の要望を伝えてくれるその姿勢に感激した。 デザートでティラミスが好きと言われた時は好きなものをちゃんとざくろ自身から教えて貰えた事に感動すら覚えたほどだ。 「あっ・・・ハァ、むぅ・・っ」 苦しいと顔を反らすざくろの顎を掴んで引き戻し、噛み付くように貪ると足の力が抜け、細く華奢な肩が震えだし、自分の腕へしがみついてくる姿に欲情が煽られた。 駄目だ・・・ 止まんねぇ・・・・ side 九流 終わり

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