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第162話
次の日、珍しくざくろは九流より後に目覚めた。
優しく髪を撫でられてその擽ったさに重い瞼を開くと、九流で視界を埋めることに朝から赤面しては狼狽えた。
起きた二人は朝食は食堂へは行かず、九流家のシェフが作ったデリバリーを食べた。
「ここの食事も美味しいですけど、先輩のお家のシェフの方も凄く上手ですね」
パンをちぎって口に入れながらもぐもぐ食べるざくろに、隣に座っていた九流がざくろのこめかみへキスをした。
「な、何ですか!?」
顔を赤くして体を少し引かせるざくろに笑みが浮かぶ。
「いや、可愛いなと思って」
「・・・・・」
なんと答えていいのか分からなくて視線を下へ向けて黙ると、九流はヒョイっとざくろを抱き上げて膝の上へ座らせた。
子供のような扱いをされ、ざくろは驚いた。
「あ、あの!重たくないですか!?」
「全然。もっと太れよ」
「・・・・抱き心地悪いです?」
逆に軽過ぎると笑う九流に不安そうに聞いた。
「別に。ただ、細過ぎて壊しちまいそうで怖いんだよ」
「俺、頑丈なんで大丈夫ですよ」
笑うざくろの前髪を掻き上げて九流は額へまたキスをする。何かにつけてキスをしてくる九流に一回一回、ざくろは赤面した。
特に理由なくキスをしてくるのは九流の気紛れというより癖のようだ。
「なぁ、ざくろ・・・」
「はい」
「俺からのお願い聞いてくれるか?」
「はい!勿論です!」
さらさらの癖のない髪を指先で弄びながら甘い空気の中、九流が聞くと目を輝かせたざくろが二つ返事した。
九流はそれに対し、満面の笑顔で願いを口にした。
「今日から一日一回、俺に我儘を言ってくれ」
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