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第164話

「あきら!」 自宅へ戻るなり、ざくろはリビングの扉を乱暴に開いて部屋へ飛び込んだ。 肌を露出し、厚化粧を施した香水臭い派手な女が三人と缶ビール片手にニヤニヤしながら女の尻を鷲掴む父親。この四人を無視し、部屋へ視線巡らせる。 すると、視線の先に大きな窓ガラスのカーテンに包まり震えながら自分を見る妹が目に飛び込んで、ざくろは地面を蹴った。 「おっと・・・・、待てよ」 駆け出した息子の手首を掴み、催促するような瞳を向けてくる父親に茶封筒に入った100万円を胸元へ押しつけるように手渡すとざくろは手を振り払ってあきらの元へと向かった。 「あきら・・・」 そっと手を伸ばして名前を呼ぶと、あきらはガバっと抱きつき、声を殺して泣いていた。 妹の左頬は青紫に腫れ上がり長い髪はボサボサで明らかな暴力を受けたのが分かる。 「あきら・・・立てるか?行こう」 妹を立たせて家を出ようとした時、父親は耳を疑う台詞を吐き捨てた。 「ざくろ!あきらは置いてけよ。こいつももう中学生なんだ。客を当てがったらいい金になるだろ?ここまで育ててやったんだ恩返しさせねーとな」 不可解な言葉を吐く男を憎悪の篭った目で睨みつけると、父親は女達に囲まれて有頂天に茶封筒なら札束を出し、うちわ代わりに風を仰いだ。 「あきらにそんな事させるわけないだろっ!」 怒鳴りつけるように叫ぶと父親は腕を組んでざくろを残念そうに見る。 「ほんっと、惜しいよなぁ〜。お前が女だったらなぁ〜・・・」 上から下に視線を巡らせ、値踏みしてくる男にざくろは不快だけを募らせた。

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