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第165話
「あきら、立って!」
あきらの腕を掴んで立ち上がらせ、家を出ようとしたとき、行く手を阻むように立ち憚る父から妹を守るようにざくろは前に立った。
「ふん。相変わらず可愛げのねぇガキだな」
下卑た笑みで見下ろしてくる父親から目を離さずいると、あきらの震える手が自分の服の裾を握りしめた。
「お前も本当、変わりもんだよな?こんなお荷物の何が可愛いんだ?将来への投資か?」
「・・・・」
「っていうより、お前こんな大金言われてすぐに用意できるって一体何やってんだよ?女でも誑かしてんのか?」
あきらをゴミのように見たあと、ざくろへ目を移し感心したように聞いてくる。
口を閉ざして答えようとしない息子に父親は左手首に嵌めていた腕時計へ目を向けた。
丁度そのとき、家のインターホンが鳴って顔を上げると父親が右手を差し出した。
「客だ。ざくろ、あきらをこっちによこせ」
あきらが自分の服の裾を握る手が強くなり、ざくろはその手を握り返す。
「おいおい、美しい兄妹ごっこはいいんだよ。早くあきらをよこせよ。5万の値段が付いてるんだから」
嬉々として告げてくる父親に奥歯を噛み締め、ポケットに入れていた財布を取り出して中から10万円を取り出すと、ざくろはそれを地面へ投げつけた。
「これで文句ないだろ。キャンセルさせとけ」
吐き捨てるように言って自分の服の裾を握り締めていたあきらの手を引き、父親の横をすり抜け部屋を出て行った。
玄関を出るとスラリと背の高いスーツ姿の年配の男が驚いた顔で二人を見てきたが、ざくろはその男を一瞥し、あきらを隠すように家を出て行った。
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