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第167話

「あきら、大丈夫?」 あれからざくろはビジネスホテルの一室をあきらの為に用意した。 ベッドの上に浅く腰掛け俯くあきらにはいつもの元気はない。 冷水で濡らして絞ったタオルを妹の青紫色になっている頬へ押し当てながらそっと頭を撫でてやった。 「・・・なんですぐ俺に電話かけて来なかったの?」 眉を下げて聞くと、あきらは膝の上で握り締めていた手の甲にポタポタ涙を落とし始めた。 体がまだ小刻みに震えていて話が出来る状態なのか分からなかったが、どうしても確認したいことがあった。 「あきら・・・、今回みたいな事は今までになかったよな?」 家を出た時からずっと気になって仕方ない質問をすると小さく頷くあきらの姿に心から安堵した。 あきらが汚されていない現実に力が抜けた。 「良かった・・・。あきら、今度からは」 「お兄ちゃんっ!」 言葉を遮り、泣きながら抱きつくあきらは掠れる声で本音を吐露した。 「も、戻ってきてぇ・・・、もう、一人はやだぁぁ・・っ、ぅえぇ〜ん・・・・」 震えながら涙を流す妹に今まで無理をさせていたことを痛感した。 この学校へ通うと告げたとき、寮生活になることを自分よりもあきらの方が不安がっていたことを思い出す。 携帯電話とまとまったお金を手渡し、何かあれば必ず連絡するよう説得して俺は今の学校へ入学した。 入学したてのときは朝晩、毎日電話があって、離れる妹を少しでも安心させる為に気遣い、毎週土日は外出許可を取って会いにきていた。 そんなある日、ざくろが体調を崩したことがあった。 高熱を出しながらも会いに行ったのだが、あきらはそのとき、兄へ負担をかけていることを知った。 それからは、電話連絡がなくなり毎週会っていた約束が第三日曜日だけと激減した。 自分の体調を思って言ってくれたことは明白で、悩んだものの笑顔でそうしようと言い切るあきらに甘えてしまった。 本当は・・・ 本当はこんなに不安でこんなに辛い思いをさせていたのに・・・・ 「・・・・あきら」 「お願いっ!お兄ちゃん、怖いの!!」 縋るように泣くあきらをキツく抱きしめて、優しく笑って頷く。 「分かった。こっちに戻るよ・・・。あきらのこと、守るから」 泣きじゃくる妹を強く抱きしめ、決心した。 学園を退学することを・・・・

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