「ところであきらちゃんは大丈夫だったのか？」 「え？」 「昨日、あきらちゃんに呼び出されたんだろ？」 「あ、はい。ちょっと怪我をしてて・・・。パニックになってたので寝かしつけてたら俺も寝てしまって・・・。本当にすみませんでした」 「怪我って大丈夫なのか？」 「はい。もう大丈夫です」 にっこり笑うざくろは九流の腕にしがみついて、その話題から遠ざけるように手を繋いだ。 「どこか行きたいところあるのか？」 「はい！」 明確なデートコースがどうやらあるらしく九流は驚いた。 「ひまわりが見たいんです」 「ひまわり？」 「昔、一度だけあきらと行ったひまわり畑があるんです。本当に綺麗で太陽へ向かってグングン伸びるあの元気な花に力を貰ったんです。無性に今、それを先輩と見たくて」 だからそこへ連れて行って欲しいというざくろに九流は頷くとタクシーを呼んだ。 いつも無表情なのに、今日は始終笑顔のざくろに九流の心臓が高鳴り続ける。 繋いだ手に力を込めると、力を加えて握り返してくるところがまた愛おしかった。 だけど、どこかいつもと違い過ぎるざくろに引っかかる点もあった。 言葉にして聞きたいのにこの笑顔が失うかと思うと怖くて九流はその事実に目を逸らしてしまった。 どうやら8月いっぱいまでしかしていない催しらしく、ひまわり畑には家族連れを筆頭に沢山の人達が押し寄せていた。 だが、本当に圧巻するのは人ではなく畑に咲き誇る1万本のひまわりだった。 一面ひまわり尽くしの花畑にざくろは感嘆の息を吐く。 「綺麗・・・・」 一輪一輪を羨ましそうに見つめるざくろに笑顔になる。 「ひまわりがこんなに好きだったとはな」 「・・・別に花に興味があったわけじゃないんです。何でだか自分でもびっくりするぐらい昨日からずっとひまわりが恋しくて」 大輪の花に見惚れていたざくろは、近くにいた女性同士の客やカップル達が九流を見て何かヒソヒソと話している姿に気付いた。 女の子達の視線がとても熱いもので、ざくろはその人達に見せつけるように九流へ身を寄せて意地悪く笑って囁く。 「今日はよそ見はしないでくださいね？」 「しねーよ」 間髪入れずツッコミと共にキスをされ赤面するも、この人を一人占めするように抱きついた。 「ひまわりの香りが先輩に移って凄くクラクラする・・・」 スゥーッと胸元を匂うと花の匂いと混じった九流の香りにざくろは幸せと一緒に包まれた。 「先輩・・・・、好きです」 溢れる気持ちを止められないと周りの目など気にもせず九流に告げる。 「本当に、こんなに好きで怖い・・・」 抱きついて背伸びをし、顔を近付けキスをした。 驚く九流の瞳に自分以外、映して欲しくなくてざくろは端正に整うその顔を両手で包んで自分へ向かせる。 目と目が合って、淡く微笑むと甘くストレートにざくろは誘った。 「ホテルに行きませんか？」